税務調査では、どんな税目であっても論点となる「重加算税」ですが、その法律要件(国税通則法)・事務運営指針(通達)、そしてその解釈、さらには実務的な対応については理解されていないことが多く、また深く学んでみると意外にその判断は難しいことがわかります。
本稿ではシリーズ(連載)で、「重加算税」について体系的かつ網羅的に解説します。
なお、重加算税の賦課要件の前提となる「過少申告加算税」については、「過少申告加算税の論点を全整理・解説」と題して、全12回にわたり解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
第2回となる本稿では、税務調査で重加算税と否認指摘された場合、どのように対応・反論したらいいのかについて解説します。
重加算税と指摘されたら調査官に問うべきこと
税務調査において重加算税と指摘された場合に、とりあえず調査官に「その根拠を聞く」ことが大事になります。これは、重加算税の課税要件を知っているか、詳しいかに関係なく、【とりあえず】調査官に問いただすことです。
「重加算税と指摘されましたが、その根拠は何ですか?」
重加算税の課税要件について、第1回で解説しましたが、「隠ぺいまたは仮装」行為があったかどうか(国税通則法第68条)になります。
上記のように調査官に問うた際に、「隠ぺい」か「仮装」という言葉が出てこなければ重加算税の課税要件を満たしていないことになります。
事務運営指針の規定内容と合致しているのか?
さらに、調査官が具体的に「○○の行為が仮装・隠ぺいに該当します」と言ってきた場合、その行為が仮装にも隠ぺいにも該当しないことを反論することになります。
隠ぺい・仮装が具体的にどのような行為を指すのか、あくまでも事実認定によりますが、大事な基準として「事務運営指針」があるわけですが、次回以降で各税目ごとに詳細を解説します。
重加算税の認定は「わざとやった」
また、「隠ぺい」「仮装」行為とはかなり曖昧な判断になるわけですが、結局のところ、隠ぺい・仮装の両行為に共通するのは、【わざと】【故意に】やったかどうかです。隠ぺい・仮装という両方の言葉には「わざとやった」「意図した行為」だという意味が包含されているからです。
ここで、調査官に「重加算税の要件は故意・わざとなど法律等に書いていない」と反論された場合、どのように答えるべきでしょう。
逆に考えてみれば、すぐにわかります。
「うっかり隠ぺいしました」
「ミスって仮装しました」
など、言葉の意味合いとして成立しないのです。
このような場合は、「では、故意ではない隠ぺい・仮装とはどのような場合か、例えでいいから言ってみてください」と主張すると、どの調査官も反論できません。
故意でないことの主張
ですから、税務調査で重加算税と指摘されたらまず、「わざとしたわけではない」「ただのミスだ」と反論することが有効になります。こう反論することで「故意ではない=隠ぺい・仮装ではない」と同じことになるからです。
このように主張すると、
「納税者自身が故意ではない・わざとやったわけではないと主張すれば重加算税ではなくなるのか?」
と極論で反論してくる調査官もいることでしょう。
これもまた違います。本人が認めなくても外形的・客観的に見た場合に隠ぺい・仮装だと調査官が考えるのであれば、事実認定すればいいのです。
私がここで論じているのは、あくまでも売上を除外したなど明らかなケースではなく、一般的なミスや誤りまでをも税務調査において重加算税と指摘された場合を言っています。
指摘された(誤りある)項目が重加算税と指摘された場合、それが「起こり得るミス」であることを主張することです。「故意」「わざと」でなければ重加算ではないのですから。
重加算税と指摘された場合の反論順序
本稿の全体をまとめると、
⇒
「なぜ?」とその根拠を問う
⇒
「仮装」「隠ぺい」という根拠に至らなければその時点で重加算税の課税要件は満たさない
⇒
「仮装」「隠ぺい」とされた場合、事務運営指針に載っているかどうかを確認する
⇒
事務運営指針を確認しても、その判断基準が曖昧である場合
⇒
「わざとではない」「故意にしていない」と反論する
ということになります。
すべての否認指摘にはその根拠があって然るべきなのですが、重加算税の場合は特に根拠を明示されないケースが多いので、ぜひ「とりあえず」根拠を問うてください。
本稿では、税務調査の立会い実務において、重加算税と指摘された場合の反論方法を全体的に解説しましたが、次回以降は各項目の詳細について、順次解説していきます。