“プロベート手続き” 対策③
海外資産の取引税務
“プロベート手続き” 対策③

著者プロフィール

金田一 喜代美

金田一 喜代美(きんだいち きよみ)

Kiyomi Kindaichi

中央大学法学部国際企業関係法学科、中央大学専門職大学院(MBA取得)、慶應義塾商学研究科修士課程修了。
大手監査法人にて上場準備経験有。
近年は、米国、豪州、シンガポール、等の相続法務税務、ITIN・Trust等諸手続きコンサルテーションに従事している。

【執筆】
「マンガでわかるかんたんQ&A」、「知って得するやさしい税金」、「相続から創続へ」、「国際相続・贈与がざっくりわかる~海を超える次世代資産~」、「税経通信」令和2年3月号 国際資産税特集 “財産取得者の納税義務の判断とその課税関係の調査” 等。

【Blog】
TAXINFOMATION

“プロベート手続き” 対策③

 第6回に引き続き、日本と異なる相続手続である米国等プロベートを、事前に回避できる具体的な方法を記載していきたいと思います。

米国においては、少額な遺産についてはプロベート手続きをしないこともできるほか、場合によっては簡易なプロベート手続きで終わらせることもできます。

1.プロベートを回避できる少額資産 

 面倒なプロベート手続きを回避できる少額資産には次のようなものがあります。

①ハワイ州では、10万ドル以下の動産
②ワシントン州では、10万ドル以下の動産
③カリフォルニア州では15万ドル以下の動産や5万ドル以下の不動産
④テキサス州では、5万ドルまで上限

などがあります。(2016年)

2.少額である動産(一部不動産含む)のこと

 少額な財産は、プロベートをしないことができたり、または次のような簡易版プロベートを行うなどの回避方法が認められています。

3.簡易版プロベートとは?

少額資産については、次のような簡易なプロベートによる相続手続きの対応が可能となっています。

①.宣誓供述書による方法(Affidavit procedure)
 相続人が、州法で定めている遺産について、種類や金額などを記載した供述書を作成して、死亡証明書と一緒に提出して少額財産であることの証明を行う方法です。

②.簡易裁判による2つの方法(Simplified court procedure)
 さらに次のような2つの方法が用意されています。
a).Informal Probateは、裁判官が関与せず弁護士が裁判所の窓口で必要書類を提出することで進められる方法です。

b).Formal Probateは、裁判官を通して行うもので、提出資料が多く時間がかかります。また、資料は裁判官自らがチェックしていく方法です。

このように、遺産が多くあったとしても、いくつかの方法を組み合わせることで簡易プロベートに移行できるケースもあるのです。ただし、少額財産の金額は、国ごと州ごとに異なっていますので、法務の専門家に確認するなどしてあらかじめ調べておく必要があります。

4.米国の遺産統一法

 米国では、国税(連邦税)の他に、州で遺産税を課税する場合もあります。州は全部で50州になりますが、実際のところ遺産税があるのは、そのうち次の18州になります。
ニューヨーク、マサチューセッツ、ワシントン、オレゴン、ニュージャージー、イリノイ、ケンタッキー、ミネソタ、ネブラスカ、アイオア、ペンシルベニア、ハワイ、ロードアイランド、バーモント、メーン、コネチカット、ワシントンDC、メリーランドです。この中でも、メリーランドの州遺産税では、被相続人と相続人の両方に課税されます。
米国では、このようにできるだけ連邦法と州法があまりばらばらにならず統一できるように、UPC(Uniform Probate Code)という遺産税法上のモデルが示されています。ただし、UPCをそのまま採用している州は全50州のうち数州になっています。実際のプロベートの内容についても、各州の規定を確認したり法律家に相談することが必要と言えます。
(米統一州法委員会 https://www.uniformlaws.org/home

 将来、資産形成ができ米国に移住をする場合には、遺産税のないところを選ぶこともありです。ただし、米国はプロベートがありますから、その対策は事前にしっかりしておきましょう。

★弊社では、米国に法律事務所がありますので米国弁護士プロベート対策に対応することが可能です。