“プロベート手続き” 対策①
“プロベート手続き” 対策①

著者プロフィール

金田一 喜代美

金田一 喜代美(きんだいち きよみ)

中央大学法学部国際企業関係法学科、中央大学専門職大学院(MBA取得)、慶應義塾商学研究科修士課程修了。
大手監査法人にて上場準備経験有。
近年は、米国、豪州、シンガポール、等の相続法務税務、ITIN・Trust等諸手続きコンサルテーションに従事している。

【執筆】
「マンガでわかるかんたんQ&A」、「知って得するやさしい税金」、「相続から創続へ」、「国際相続・贈与がざっくりわかる~海を超える次世代資産~」、「税経通信」令和2年3月号 国際資産税特集 “財産取得者の納税義務の判断とその課税関係の調査” 等。

【Blog】
TAXINFOMATION

“プロベート手続き” 対策①

 第4回で、日本と異なる相続手続である米国等プロベートにつき、記載しました。プロベートがあると、簡単に遺産分割ができず、半年から長い場合は数年かかることもあります。
 日本にはないプロベート制度について、今回は実務的な全体像を、そして次回から数回にわたって、事前に回避できる方法とその具体的なものを記載したいと思います。

1.プロベートの回避策

 プロベートの回避策としては、主に次のような方法が挙げられます。
受取人指定財産、共同所有(ジョイント・テナンシーなど)、共有口座(ジョイント・アカウント)、    少額資産、生前信託(リビングトラスト)、日本法人による財産の保有。

2.プロベートの軽減策

 そしてプロベートを軽減する方法として有効なのは、遺言書(Will)の作成です。
プロベートは、遺言書がある場合と、ない場合とでは手続きが異なります。
たとえプロベートを回避することができなくても、生前にその国の言語で遺言書を作成しておくと、プロベート手続きが簡素化されて費用を軽減させることができます。

3.プロベートの対象とならない財産

 次のような財産は、原則としてプロベートの対象にはならないです。

① 生命保険・個人退職年金・401K口座
 これらは、あらかじめ受取人が指定されている財産です。ただし、受取人指定を忘れていたり、受取人が先に亡くなったりした場合はプロベートが必要とされますので、あらかじめ確認しておくことが必要です。
② 家財や生活品
 日常で必要なものであれば、そのまま家族のものになります。日常で必要なもののほかに、国や州法により規定されているものも含まれます。
③ 賃金給与
 賃金給与はすぐに家族のものとなります。ただし、ワシントン州のように上限2,500㌦までというように、枠を決めているところもあります。
④ 自家用車
 名義変更を認めていますが、名義変更の台数を制限している国もあります。

4.米国での配偶者への配慮 

 米国では、プロベートを通さなくても、配偶者には次のような優遇措置があります。

① 米国の遺産免除額のPortability(ポータビリティ)
 2013年以降、夫婦間トラストを作らなくてもご夫婦間で連邦遺産税の免除が許可されました。これにより、最初の配偶者で使用しなかった遺産免除額と生存配偶者の遺産免除額の2名分の合計最大値の免除額が利用できるようになりました。(2019年で1名11,400,000㌦)
② 婚姻控除 Marital Deduction
 なお、米国籍の配偶者への遺産の移転には遺産税はかかりません。