税務調査では、どんな税目であっても論点となる「重加算税」ですが、その法律要件(国税通則法)・事務運営指針(通達)、そしてその解釈、さらには実務的な対応については理解されていないことが多く、また深く学んでみると意外にその判断は難しいことがわかります。
本稿ではシリーズ(連載)で、「重加算税」について体系的かつ網羅的に解説します。
なお、重加算税の賦課要件の前提となる「過少申告加算税」については、「過少申告加算税の論点を全整理・解説」と題して、全12回にわたり解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
第3回となる本稿では、重加算税を規定した事務運営指針のうち、「法人税」に関する規定を解説します。
5つの事務運営指針と法人税の規定
重加算税の賦課要件・基準を定める事務運営指針(通達の一種)は、税目ごとに5つの規定が存在し、全て国税庁のホームページで公開されています。
各事務運営指針ごとに、規定の内容が若干異なっている(税目ごとの特異性が反映されている)ことから、税務調査で重加算税と指摘された場合、該当する税目の事務運営指針の内容を精査する必要があります。
なお、本稿で解説する重加算税の事務運営指針ですが、下記となります。
「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(改正 平成28年12月12日)
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm
重加算税に該当するケース
上記事務運営指針では、法人税において重加算税に該当するケースとして、下記のようなケースを挙げています。
② 帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること。
③ 帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること。
期ズレは重加算税にならない
一方で、重加算税の事務運営指針で大事なのは、重加算税に該当しないケースも挙げられていることです。法人税の事務運営指針では、4つの具体的ケースを挙げていますが、1つずつみていきましょう。
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調査官によっては、「請求書の日付から売上計上時期は明確であったはず」「売上を故意に翌期にズラしたのだから重加算税だ」と指摘する場合もありますが、これは事務運営指針から考えると間違った指摘ということがわかります。
逆期ズレも重加算税にならない
また、経費の繰り上げ計上である「逆期ズレ」も重加算税にならないと規定されています。
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会社によっては、予算消化などの理由により、経費を繰り上げて計上する場合もあるようですが、この逆期ズレもまた重加算税にならないことが事務運営指針において明記されています。
棚卸資産の評価損も重加算税にならない
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交際費に振り替わった否認は重加算税にならない
税務調査でよくある、「会議費」「福利厚生費」「支払手数料」などが、(税務上の)交際費として否認された場合、交際費の損金算入額の上限を超えれば増差所得が発生するわけですが、この項目も重加算税にはなりません。
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これら事務運営指針の規定を把握・理解せずに、重加算税と指摘する調査官が多いわけですが、特に「期ズレ」「交際費の否認」に関しては重加算税にならない、と事務運営指針から明確に反論可能ですので、ぜひ参考にしてください。