税理士・会計事務所職員にとって、実務上絶対に理解しておかなければならない「加算税」ですが、その法律要件(国税通則法)・事務運営指針(通達)、そしてその解釈、さらには実務的な対応については理解されていないことが多く、また深く学んでみると意外にその判断は難しいことがわかります。
本稿ではシリーズ(連載)で、「過少申告加算税」について体系的かつ網羅的に解説します(なお、本連載ではわかりやすさを重視し、無申告加算税や加重部分の計算などはあえて省略しています)。
前回まで過少申告加算税を網羅的に解説してきましたが、第8回目の本稿では、いったん過少申告加算税をまとめた図示をし、各論点の注意事項を解説します。
修正申告による過少申告加算税を図にすると
修正申告を提出した場合の過少申告加算税は、大きく3パターンに分けることができます(それぞれの詳細については、前回までの連載をお読みください)。
②調査通知後~更正の予知前:5%
③更正の予知後:10%
これをわかりやすく図にしたものが下記になります。
事務運営指針の規定内容を解説
さて、調査通知は起点となる基準がわかりやすい・明確なのですが、更正の予知についてはかなり不明確で、結局は調査のどのタイミングで修正申告を提出すれば加算税が課されるのか、はっきりしません。
過少申告加算税の事務運営指針が平成28年12月に改正されていますので、この点を確認しておきましょう。
「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_01/00.htm
まず調査通知の時期と加算税の関係ですが、事務運営指針では下記と定められています。
第1 過少申告加算税の取扱い
3(調査通知に関する留意事項)
通則法第65条第5項に規定する調査通知(以下「調査通知」という。)を行う場合の同項の規定の適用については、次の点に留意する。
(1)通則法第65条第5項の規定は、納税義務者(通則法第74条の9第5項に規定する場合に該当するときは、納税義務者又は同項に規定する税務代理人)に対して調査通知を行った時点から、適用されない。
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税理士に調査通知があっても、納税者に調査通知があっても、同じく以後の修正申告には5%が課されることになります。
(2)調査通知を行った場合において、調査通知後に修正申告書が提出されたときは、当該調査通知に係る調査について、実地の調査が行われたかどうかにかかわらず、通則法第65条第5項の規定の適用はない。
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上記3パターンの②を指しています。
(3)調査通知後の修正申告書の提出が、次に掲げる場合には、調査通知がある前に行われたものとして取り扱う。
①当該調査通知に係る調査について、通則法第74条の11第1項の通知をした後又は同条第2項の調査結果の内容に基づき納税義務者から修正申告書が提出された後若しくは通則法第29条第1項に規定する更正若しくは通則法第32条第5項に規定する賦課決定をした後に修正申告書が提出された場合
⇒
この規定は非常にわかりにくいのですが、結局のところ、調査が完全に終わった(申告是認・修正申告・更正のどれか)場合、その後修正申告を提出しても、調査通知前=加算税を課さない、という規定になります。
事務運営指針では「更正の予知」はいつなのか?
「更正の予知」の時期については、同事務運営指針では下記のように規定されています。
2(修正申告書の提出が更正があるべきことを予知してされたと認められる場合)
通則法第65条第1項又は第5項の規定を適用する場合において、その法人に対する臨場調査、その法人の取引先の反面調査又はその法人の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該法人が調査のあったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合の当該修正申告書の提出は、原則として、これらの規定に規定する「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当する。
(注) 臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当しない。
この事務運営指針の書き方が曖昧なのですが、「更正の予知」に該当するかどうかは、
【調査開始~(具体的な)非違事項の指摘】
のどこかにある、としか言えません。
なお、「更正の予知」の詳細に関しては、本連載の第2回および第3回を参考にしてください。
改正前は調査通知なる概念がなかったので、事前通知があっても調査初日までに修正申告を提出しておけば、加算税も重加算税も課されない、という単純な理解で済んでいましたが、調査通知の規定により5%の加算税も加味して考える必要があります。