税務調査を受けていると、特に6月もしくは12月上旬になって、調査官が「来週中には修正申告してもらわないと困ります」など、急に焦りの色が出てくる場合があります。また、具体的に調査官が「締日(しめび)があるから」と、理由を言ってくる調査事案もあります。
本稿では、税務調査における税務署内の締日と、調査官の評価の関係について解説します。
税務署における「締日」とは
税務署内で設定・使用されている「締日(しめび)」とは、税務署の中で毎月設定されている日程で、「この日までに修正申告書等を処理しなければ、当月分の処理とみなしませんよ」という日になります。
締日は毎月設定されているのですが、調査官の中でもっとも気にするのが、毎年6月と12月の締日。
この理由を説明する前に、まず締日について説明します。
税務署がなぜ毎月締日を設けているかというと、税務調査の結末を前提に書くと、
税務調査の着手
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修正申告の収受(更正でも同じです)
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KSK(国税総合管理システム)への入力
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調査ファイルの作成(KSKの入力内容も合わせてチェック)
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統括官の決裁(金額によっては副署長以上になります)
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加算税・延滞税の起案
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1部門(内部事務)への回付
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管理徴収部門との連携(追徴税額が納付されているかを確認するため)
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修正申告書の編綴・保管(電子申告の場合、ここはなし)
という全体の流れになっています。
管理徴収部門への金額の決定・共有をもって税務署内部では修正申告書を最終処理したことになるわけなのですが、調査官が修正申告書に収受印を押してもそれだけで終了にはならないので「締日」というものを設けています(内部事務を全て月末で完了させるため日数に余裕をみています)。
締日を超えた修正申告はどうなる?
締日は毎月20日前後に設定されていますが、例えば12月であれば、年末の休みがあることによって、締日が中旬(15日前後)に設定されています。
ですから、調査官としては12月10日くらいまでに修正申告書を提出してもらわなければ上期(事務年度の7~12月)の税務調査件数にカウントされなくなります。
これは、6月まで継続されている税務調査でも同じで、6月15日くらいまでに修正申告書を提出してもらわなければ下期(事務年度の1~6月)の税務調査件数にカウントされなくなります。
締日とはいわば、税務署内の内部作業を行うために設定されているスケジュールで、国税職員にとっては重要な日程です。
締日と調査官の評価の関係
では、調査官がなぜ、特に6月と12月の締日を気にするのかというと、そこには調査官自身の評価が絡んでいるからです。
税務署ごとの異動、税務調査を含めて、国税(税務署)は事務年度(7月~6月)で動いていますが、国税職員の評価は4月~3月が基準になっています。
このズレによって、下記のようになっています。
- 税務調査は7月~12月・1~6月を区切りとして動く
- 人事異動は7月に行われ、調査官の評価は3月時点の上司が行う
- 評価の対象期間は4月~3月が基準期間
以上から、上期(7月~12月)の調査で結果を出さないと評価の対象にならない、ということです。
わかりにくいので、春の税務調査を考えてみましょう。
4月に税務調査を実施して多額の増差所得を課しました。この時の上司は7月の異動で変わります。7月以降の上司は4月の調査を知りません(結果は知れますが経緯など詳細はわからない)。
この結果として、春の税務調査に結果を残しても、評価者が変わることで評価には加味されにくいのです。
この事実から裏を返すと、調査官にとって評価されるためには、上期の調査結果が重要なのです。
こういう裏事情を知ると、年末に近づくと調査官が焦ってくる内情がわかりますし、交渉を有利に進める方法・時期もわかってきます。
税務署の締日と、調査官の評価時期については、知っておいた方がいい知識です。