国の施策による後押しもあり、昨今は急速にキャッシュレス化が進んでおり、これを機にクレジットカード決済等を導入した店舗も増えています。
本稿では、クレジットカード決済をした際の手数料について、間違いやすい消費税の区分について解説します。
税理士が実際に間違った実例
先日、ある税理士さんから聞いた実話を紹介します。
税務調査でクレジットカード手数料に関する消費税の判定を間違っていることが判明し、結果として減額更正になった、という事案です。
クレジットカードの手数料(年間に数百万円)を非課税としていたところ、調査官が明細等を調べ、実は課税取引であった、という内容です。
顧問先からすれば、いったん納税した消費税が税務調査によって還付されたわけなので喜んだのかと思いきや、その顧問先からは、調査直後に契約を打ち切られたそうです。
よくよく考えてみれば当たり前の結果で、税理士・会計事務所の認識誤りによって、消費税を毎期多めに払わされていたわけですから、顧問先からすればたまったものではありません。
その税理士さんが顧問先に最後に言われたことは、「税務調査がこなかったら、うちの会社は消費税をいくら余分に納付したことになったんだ!?」だったそうです・・・
クレジットカード手数料は非課税になる理由
クレジットカードの(支払い)手数料について、機械的に「非課税」で処理している会計事務所も多いようですが、実際のところは、課税のケースも多くあります。
まず、クレジットカードの手数料が非課税になる根拠を確認しておくと、下記になります。
国税庁の質疑応答事例「クレジット手数料」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/06/02.htm
クレジットカードの手数料は、譲渡債権にかかるものに該当しますので、消費税法上の非課税に該当する、という考え方です。
論点は少し逸れますが、クレジットカードの明細だけでは仕入税額控除の要件は満たしていないことになります。
「カード会社からの請求明細書」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/18/05.htm
カード会社から発行される明細書には通常、「(3)課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」は記載されていませんので、厳密にいえば請求書等に該当しないことから仕入税額控除ができないことになります(税務調査でこれを指摘された例を私は今のところ知りませんが)。
話を戻すと、クレジットカードの手数料が非課税になるのは、債権譲渡になっているからであって、債権譲渡になっていなければ、いかにクレジットカードの利用手数料であっても非課税ではなく「課税」になります。
クレジットカード手数料が課税になるケース
この点、わかりにくいので実例で説明します。
下記は、株式会社InspireConsulting(以下「当社」)で利用している実際のクレジットカードの利用(お客様からの収受分=売上)になります。
http://kachiel.jp/sharefile/inspire/ips_meisai_62463.pdf
※この明細書の手数料部分に消費税が課されていることを確認して下記を読み進めてください。
この明細書の発行会社は「株式会社インターネットペイメントサービス」となっていますが、この会社は名前のとおり、VISAでもJCBでもなく、クレジットカードの利用を取りまとめている、いわゆる「代理店」です。
全体の関係をまとめると、下記になります。
クレジットカード発行元(信販会社)
(1)⇔クレジットカード代理店
(2)⇔当社
(1)の契約は債権譲渡になるのかもしれませんが、(2)の契約はあくまでも、クレジットカードを利用できるシステムを利用できる、または取りまとめて扱えるという役務提供を受けていることになります(当社の契約書・規約では「システム利用料」)。
ですから、当社からすれば考えれば、実質的にはクレジット手数料にもかかわらず、消費税は非課税ではなく課税になっているというわけです。
文章だけではわかりにくいので、わかりやすい解説しているサイトを紹介します。
「クレジットカード決済に係る消費税の注意点 その債権の流れを把握していますか?」
https://ameblo.jp/kaikeinetwork/entry-10478474181.html
課税・非課税は実務上どのように判別すべきか?
実務上クレジットカードの手数料について消費税の可否判定を行う場合、「明細を見ないとわからない」「明細に消費税が載っていれば課税対象」と判断できるわけですが、明細に消費税が記載されていないのでは、正確な可否判定をすることができません。
海外の会社を利用していれば、不課税ということもあり得るわけで、非常に難しい問題だといえます。
また、代理店を利用しているからといって、絶対に課税取引と判断できるわけでもありません。
このような場合は、契約書や利用規約等を読んで可否判定を行うしかないでしょう。
他に聞いた話では、代理店が発行する利用明細を見ても可否判断ができないので、電話にて問い合わせたところ、代理店ごとに「課税」の場合も「非課税」の場合もあった、という税理士さんもいました。
なお、当社では2社クレカの代理店を使っていますが、両方「課税」であることは、規約と明細書から明確になっています。
「クレジットカードの手数料=非課税」と思い込んでいると処理を間違えるので注意してください。
また、今から誤りに気付けば、当然更正の請求はできますので、確認しておくべきでしょう。