税務調査手続きの大改正が実施された際に、併せて拡大された「理由附記」の制度ですが、この点正しく理解されていないように思います。
本稿では、納税者側が自ら更正の請求をした場合に、その対応に対して税務署側は理由の附記をしてくるのか、という点について解説しましょう。
更正の請求をした後の法律行為を場合分けします
「更正の請求の場合、理由の附記はされるのでしょうか」。これを解説するためには、前提の解説と、その場合分けが必要となります。
まず、更正の請求は国税通則法第23条に定める法律行為ですが、その後は3つに分かれます。
(1)全額通る場合:国税の職権による減額更正(還付)
⇒ 申請した金額で「更正通知書」が送付される
(2)一部だけ通る場合:国税の職権による減額更正(還付)
⇒ 認められた金額で「更正通知書」が送付される
(3)全額通らない場合:減額更正されない
⇒ 「更正をすべき理由がない旨の通知書」が送付される
なお、(2)(3)の場合、不利益処分に該当しますから、不服申立てすることができます。
理由附記が必要なケース
また、理由の附記はどのような場合にされるのか、合わせて場合分けで確認しましょう。
(1)不利益処分のすべて
⇒ 行政手続法第8条・第14条が適用
(2)青色申告者に対する更正(不利益処分のみならず、更正であればすべて)
⇒ 所得税法第155条・法人税法第130条が適用
場合分けの組み合わせで考えると・・・
以上の組み合わせから、更正の請求に対する理由附記の必要性を考える必要があります。
⇒ 不利益処分ではないため、理由附記は無い
(1)の場合で、青色申告者に対する減額更正
⇒ 不利益処分ではないが、理由附記は要する
⇒ 不利益処分のため、理由附記は要する
(2)の場合で、青色申告者に対する減額更正
⇒ 不利益処分のため、理由附記は要する
⇒ 不利益処分のため、理由附記は要する
(3)の場合で、青色申告者に対する減額更正
⇒ 不利益処分のため、理由附記は要する
なお、理由附記が必要にもかかわらず、理由附記がない場合、それだけで違法な法律行為に該当し、取消しの対象となります。この点は、実務上も注意が必要です。
「更正の申出」はどうなるのか?
また、更正の請求ではないが、似たような行為として「更正の申出」があります。これも更正の請求と同じで、
⇒通る場合:(職権による)減額更正
⇒通らない場合:理由附記が必要
となっています。
この点は非常に話がややこしいのですが・・・更正の申出は法律に基づく申請ではありませんので、純粋に法律だけを考えると、国税側が更正の申出の全部を認めないまたは一部を認めない場合には理由附記は必要とはなりません。
一方で、国税の内規である「更正の申出に係る事務処理要領の制定について(事務運営指針)」(平成23年12月2日付課総2-27ほか8課共同)において、更正の申出を認めない場合でも、理由附記をすることを定めていますので、実務上は理由附記が要することになっています(ただし、不服申立てはすることができません)。
理由附記については、理由附記の有無だけで違法行為を根拠とした取消しや、不服申立ての対象となるため、実務上は注意を払う必要があります。
更正の請求にかかる更正通知書も、理由附記まできちんと確認する必要があります。ぜひ、注意してください。