「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合」の適用を申請したところ、税務署から認められない旨の連絡を受けたという質問・相談が、過去に何度かありました。
この制度の適用にあたり、税務署側は外形的な判断基準のみで適用がないことを主張してきがちですが、それに対して下記のように反論すれば通ることも多くあります。
2つの相談事例を取り上げて、申請却下に対する反論根拠を解説しましょう。
なお、国税庁の質疑応答事例には下記がありますので、併せて参考にしてください。
「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/17/07.htm
実際に申請が却下された事例
【相談事例1】
- 前期に収用があり、多額の非課税売上が計上されたため、「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合」の適用申請をし、承認を受けた
- 今期に土地の譲渡が発生し、非課税売上が計上されたため、2年連続で上記準ずる割合を適用しようと申請した
- 税務署より却下する旨の連絡を受けた
【相談事例2】
- 3期前にたまたま固定資産(土地・建物)の譲渡があり非課税売上を計上した。3期前の課税売上割合は82%。
- 3期前は「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」は提出していない
- 今期もたまたま固定資産(土地)の譲渡があったため、「申請書」を提出。適用前の課税売上割合は99%。
- 税務署から承認できないので「取下書」を提出してほしいとの連絡があった
どちらの事案も、「過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内の要件を満たしていない」という外形的な税務署の判断になっています。
税務署に対する反論・反証の材料は・・・
さて、税務署に主張・反論する場合、制度の(立法)趣旨を根拠にすべき、というのは、メルマガやセミナーでは常々お伝えしているとおりで、今回の論点も税務署側には制度の趣旨を根拠に反論することになります。
本制度の趣旨ですが、税制改正時に下記の資料が公開されていますので、そちらをご覧ください。
平成23年6月の消費税法の一部改正関係一
「95%ルール」の適用要件の見直しを踏まえた仕入控除税額の計算方法等に関するQ&A〔1〕
【基本的な考え方編】平成24年3月 国税庁消費税室
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/pdf/kihon.pdf
今回対象となる部分は、21ページ~になりますので、該当部分を下記に引用します。
(1)土地の販売を事業としていない事業者において、譲渡することを予定していなかった本社用地や工場用地など事業者が事業の用に供するために取得していた土地の譲渡が経営上の事情等によりたまたま発生し、その結果、課税売上割合が急激に減少したような場合には、当該土地の譲渡は本来の事業として予定されていなかったわけですから、このような取引までをも取り込んで、課税売上割合により仕入控除税額の計算を行うことは事業の実態を反映したものと言えず、不合理であると考えられること。
(2)法第30条第3項第1号では、「当該割合が当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係 販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること」を要件としているところ、たまたま土地の譲渡があった場合には、【1】事業者は土地の販売を事業としていないため、事業の種類の異なるごとの割合は採り得ないこと、また、【2】土地の譲渡がたまたま行われたものであるため、事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとの割合も採り得ないことから、これらの区分により算出することができないと考えられること。
(注)「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認」は、たまたま(偶発的に)発生した土地の譲渡が、法第30条第3項で規定する課税売上割合に準ずる割合の算出方法を採り得ない事情にあることを前提として、便宜的に当該土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合と前課税期間の課税売上割合とのいずれか低い割合を課税売上割合に準ずる割合として承認しても差し支えないとするものです。
具体的にどのように主張・反論すべきか
ここから、適用申請が取らなかった場合の反論方法を解説しましょう。
土地の譲渡は消費税法第30条第3項の特例として、法律ではなく通達等で認められたものです。
上記記載の(2)や(注)のとおり、趣旨として、たまたま土地は消費税法第30条第3項の適用を認めるべきであるにもかかわらず、条文の規定内容から、課税売上割合に準ずる割合の効果が認められないため、便宜として設けられているものと理解することができます。
前年以前3年の通算課税売上割合を準ずる割合として認めているということは、土地の譲渡を加味しない事業の平均的な課税売上割合を消費税法第30条第3項第1号の「当該割合が当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるもの」である、ということも意味しますので、法令解釈としても3期前の土地の売却の影響も除外して考えることが合理的であると考えることができます。
また、土地の譲渡をしても事業実態は何ら変わっていないはずでしょう(土地を売却することで、事業の内容等を変更する場合などは除かれることになります)。
反論方法としては、今回の土地の譲渡について、上記Q&Aの趣旨(1)にある、
「譲渡することを予定していなかった~土地の譲渡が経営上の事情等によりたまたま発生」
したことを、いかに主張できるかがポイントになります。
「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合」の申請については、3年以内の申請があった場合や、申請していなくても3年以内の課税売上割合から外形的に却下の判断をされることも多いのですが、制度の趣旨から考えれば、適用されるべきである事案も多くありますので、税務署から却下の連絡があったとしても、適正に反論することが可能なのです。