税務判断を行ううえで非常に難しい論点として、社内イベントにかかる費用が、福利厚生費なのか交際費なのかという区分けがあります。
本稿では、この論点に関するかなり興味深い判決を紹介し、解説します。
前提となる事実が興味深い裁判
取り上げるのは福岡地裁平成29年4月25日の判決で、専ら従業員等の慰安のために行われた「感謝の集い」にかかる費用を、福利厚生費として処理していたものを税務調査において交際費として否認された事案です。
この裁判で争われた税務判断とは直接的には関係ないのですが、この会社および代表者の状況・経緯は非常に興味深いものがあります。判決文の中から、一部だけ引用します。
税務調査の対象となった期間の利益等を見ても、その後継続的に莫大な利益をあげ続けています。まさに立志伝中の社長のようです。
従業員全員を対象とした全社の集まり
さて、この法人ですが業種は「養鶏事業、食肉等食料品の販売事業」で、工場を含めて7事業所を保有しています。
従業員数も1000人を超えており、マネジメントのために年に1回「感謝の集い」と称する全社の集まりを開催しています。
国税が交際費とした論点とは?
国税側が交際費とした論点は大きく2つです。
①交際費と福利厚生費の(法的)区分
②金額基準
なお、原告たる法人側は、金額に関係なく(交際費には該当せず)福利厚生費と主張しましたが、裁判所は通達に規定する「通常要する費用」に着目し、その主張論拠は否定しました。
全社集会の費用はいくらなのか?
ここにいう「感謝の集い」は、平日の日中、4~5時間のみ行われているもので、宿泊は伴っておらず、従業員に参加人数・率、および従業員1人あたりの費用は下記です。
開催の目的に着目
裁判所の判断基準として、最終的には金額の妥当性、つまり「通常要する費用」かどうかに帰結するわけですが、その前提として「本件行事に係る費用が社会通念上福利厚生費として認められる程度を超えるものであるか否かについて検討」されています。
・開催の目的
「従業員の一体感や会社に対する忠誠心を醸成して、更なる労働意欲の向上を図るためには、従業員全員において非日常的な体験を共有してもらうことが有効」
・日帰り開催している理由
「従業員の女性比率の高さ等に照らせば、原告の事業に支障を来すことなく、可能な限り全員参加が可能な慰安旅行の日程を考えると、原告においては、宿泊を伴う旅行は現実的ではなく、日帰り旅行にせざるを得ない状況にあった」
・必要性・相当性
「本件行事の目的、開催頻度、会場の性質、従業員の女性比率の高さ、日程の制約等に加えて、本件行事に参加するための従業員の移動時間は往復3時間ないし6時間に及ぶことなどを考慮すれば、本件行事の内容として、県外への旅行等に代わる非日常的要素として、大型リゾートホテルにおける特別のコース料理やプロの歌手や演奏家によるライブコンサート鑑賞を含めることには、必要性、相当性があった」
判断要素を総合勘案して納税者が勝った
以上を前提としたうえで、参加率が70%を超えており、かつ、日帰り慰安旅行に係る費用として通常要する程度(範囲内)として、福利厚生費として認められることとなりました。
社内イベントであれば、福利厚生費であって交際費として指摘されないと考えている方も多いようですが、実際はそんなことはありません。
1人あたり2万円ちょっとの費用で否認されていること自体が驚きではありますが、逆に言えばこの程度の費用であっても、否認されるリスクはあるということです。
この裁判内容は非常に面白いので、興味ある方はぜひ全文を読んでみてください。
TAINSコード:Z267-13015