IRSは米国市民ではない非居住者に対する遺産税申告を次のように規定しています。
今回から3回にわたり概要を記載する予定でおります。
Ⅰ.遺産税申告書の概要
IRSは「米国市民ではない被相続人の非居住者」が、米国に所在する資産を保有している場合は、遺産税は被相続人の死亡日に所有されていた有形資産と無形資産の両方が含まれる場合があると規定しています。
1)遺産税申告書Form706-NAについて
米国非居住者は「Form706-NA」によって遺産税を申告します。遺産税の計算は、米国に所在する遺産の合計額を記載する必要がありますが、米国外に所在する資産の合計額も別途記載する必要があります。この合計2つは、「米国内の総資産」と「米国外の総資産」であり、含まれる資産には、現金および有価証券、不動産、保険、信託、年金、事業利益、およびその他の資産で構成されます。
2)過年度の贈与税加算
課税対象遺産は、1977年に行われた贈答品から始まり、直接または間接的に譲渡され、総資産に含まれていない米国にある有形または無形の資産の生涯課税対象の贈答品の価値も追加します。被相続人の米国に所在する資産の死亡日が、贈与税特定免除および調整された課税対象の贈与額とともに、提出基準額の60,000ドルを超える場合、遺言執行者は、被相続人の財産についてForm706-NAを提出する必要があり、提出のしきい値はインフレ指標の影響を受けません。
3)遺産税課税価額
死亡日に保有する遺産の評価は公正市場価値が使用されるため、必ずしも被相続人が支払った価値と同額ではありません。(遺産税の評価の追加情報はInstructions for Form 706参照)
4)控除
遺産税の計算上、葬儀および管理費、不動産に対する請求額、未払住宅ローンおよび債務、特定の補償されていない損失が控除として認められる場合があります。なお慈善控除と婚姻控除等は制限が別途規定されています。
5)提出の期限
原則的に死亡日後9ヶ月以内になりますが、6カ月間延長申請をすることもでき、この場合は申請が必要になります。(Form 4768:Application for Extension of Time to File a Return and/or Pay U.S. Estate (and Generation-Skipping Transfer) Taxes参照。)
すでに6か月の延長を受け、米国外の遺言執行者である場合は、2回目のフォーム4768を提出し、説明文を添付することにより、提出期間の追加延長を申請できます。
なおコロナウイルスのパンデミックによる特定の税金関連の期限に対する納税者の救済は別途あります。(Taxpayer Relief for Certain Tax-Related Deadlines Due To Coronavirus Pandemic参照)
6)その他の基礎報告
申告書Form706-NAの提出から30日以内に総遺産に含まれる各資産の遺産税額を遺産Form8971にて、IRSおよび受領者に報告する必要があります。この時売却またはその他の方法で処分された場合の特定の資産の基礎は、受益者が受け取ったときの資産の基礎(遺産税額)と一致している必要があります。
Ⅱ.米国との遺産税(相続税)条約国は
米国は他国との遺産税条約を締結しており、以下の国で施行されています。
遺産税条約または議定書の規定に基づいてこの申告書の項目を報告する場合は、申告書に条約に基づいていることを示すステートメントの添付が必要になります。(規則§301.6114-1参照)
Ⅲ.申告書の提出者
遺産税の提出者は遺言執行者です。贈与税特定の免除および調整された課税対象の贈与の金額とともに、被相続人の米国に所在する資産の死亡日が60,000ドルの申告基準額を超える場合です。贈与税特定の免除とは、1976年9月9日から1976年12月31日までの間に被相続人が贈与した贈与に許可される金額を指します。調整された課税対象贈与額は、1976年12月31日以降に被相続人によって行われた調整済み課税対象贈与額を指します。
Ⅳ.遺産税申告書の提出先
次になります。
(私書箱・個人情報局等)➣PDSを使用する場合は、このアドレスになります:内国歳入提出処理センター、333のW.パーシング、カンザスシティ、ミズーリ6410
Ⅴ.遺産税申告書「Form706-NA」の用語について
各用語の定義は次のようになります。
1)アメリカ
アメリカ合衆国とは、50の州とコロンビア特別区を意味します。
2)非居住外国人の子孫
非居住外国人の子孫とは、死亡時に米国に居住しておらず、米国市民でもない子孫のことになります。このフォームの目的上、米国の所有物の市民が米国市民ではない者です。
3)米国の長期居住者
米国の長期居住者とは、米国居住が終了した課税年度で終わる過去15課税年間のうち少なくとも8年間、米国の合法的な永住者(グリーンカード保有者)であった外国人です。
4)エグゼキュータ(遺言執行者)
遺言執行者とは、故人の遺産の個人的な代表者、遺言執行者、遺言執行者、管理者等です。米国で遺言執行者が任命されていない場合、被相続人の遺産を実際に所有しているすべての人が申告書を提出しなければなりません。それ以外の場合は、遺産を完全に説明できる各人が可能な限り申告書を提出する必要があります。
遺言執行者は、自分のステータスを証明する文書を提供する必要があります。文書はさまざまですが、遺言の証明されたコピーや遺言執行者を指定する裁判所命令を含む場合もあります。
Ⅵ.米国駐在員に対するにダブル課税
駐在員は駐在期間ごとに特別規則の適用の可能性がありますので留意が必要になります。
死亡前に米国から駐在した子孫には、特別な遺産税規則が適用される場合があります。例えば、市民権を放棄した米国市民、グリーンカードの放棄、租税条約の下で他国の居住者のみであるという立場をとった長期居住者等は駐在員として扱われる場合があります。(※§877 代替税制)
2008年6月17日以前に海外駐在し、死亡日に10年間の代替税制※の対象となった被相続人については駐在員課税(§2107)規則が適用され、被相続人の米国の課税対象額が決定されます。
2008年6月17日以降に駐在し、§877で定義されているように、死亡日に「対象となる駐在員」であった子孫には、§2107のかわりに§2801が適用される場合があります。
したがって、2008年6月17日以降に駐在した子孫は、他のすべての非居住外国人の子孫と同様に、通常の米国の遺産税の対象となる可能性があります。
これら「米国駐在員」への言及は、2008年6月17日より前に駐在した子孫を指しています。
1)1995年2月6日以降から2004年6月3日までの海外駐在
個人の平均年間純所得税債務または純資産が一定の限度を超えた場合、この推定額を覆す判決等がなければ、被相続人は代替税制の対象となる可能性があります。
2)2004年6月3日以降、2008年6月17日以前の海外駐在の場合
個人として以下の3つのテスト額のいずれかを満たした場合、被相続人は代替税制の対象となります。
*純資産(全世界で200万ドル以上)
*税務コンプライアンスの証明額(5年間の申告義務)
※ §877代替税制とは、
≪世界的な資産のみなし売却益の未実現利益に対する所得税課税(出国税)≫を指します。(2020年の免税額は737,000ドル)
3)慎重な計画が必要になる
米国市民と長期居住者は、米国市民権の放棄からの海外駐在の提案を慎重に計画する必要があります。そうしなければ、長期居住者は未実現利益課税(出国税)と相続税の両方を引き起こす可能性があります。
ただし、米国の出国税は、駐在員が世界中で保有しているすべての資産を売却したとみなすため、所得と純資産を制限することにより税金を抑えるという方法もあります。
See)
*Estate Tax for Nonresidents not Citizens of the United States
*About Form 706-NA, United States Estate (and Generation-Skipping Transfer) Tax Return
*About Form 4768, Application for Extension of Time To File a Return and/or Pay U.S. Estate (and Generation-Skipping Transfer) Taxes
*Instructions for Form 706-NA (Rev. November 2020) United States Estate (and Generation-Skipping Transfer
*Frequently Asked Questions on Estate Taxes
Taxpayer Relief for Certain Tax-Related Deadlines Due To Coronavirus Pandemic