中国では昨年末に、アリババ子会社の上場が延期されるなどフィンテック企業の雲行き自体は不透明になってきています。このようなことが一因であるのか、仮想通貨であるビットコインはこの1年間で4倍の価値をマークし、ついに今年1月7日にはついに4万ドルを突破したものの、その後1月11日には2日間で26%の大暴落となり相場は大きく乱降下を続けています。
これを受けて、英国金融当局は「仮想通貨に投資すると最終的に資金をすべて無価値にするリスク」があると指摘しました。
一方、OECDは、仮想通貨の全体的な時価総額は2020年10月時点では3,900億米ドルに達し、毎日1,000万件以上の取引が行われている金融経済環境を鑑み、世界各国での暗号通貨の課税の取り扱いを調査し発表しました。(※1)
Ⅰ.概要
暗号資産全体への課税は、安定した『現実世界のコイン資産』と「中央銀行のデジタル通貨」への関心の高まりに含まれる影響など、新たに多くの課税問題を考慮することになります。
このことについて、OECDはG20と中央銀国会議において、ブロックチェーンネットワークの維持に用いられるコンセンサスメカニズムの進化や、分散型金融の黎明についても世界50か国以上の国からの各国の暗号資産への課税の取り組みを下に、その課題を公表したのです。
なぜなら、暗号資産、特に仮想通貨は急速に増加し、税務政策立案者はその影響を考慮する段階にありますが、これまでのところ、税制と脱税の影響はほとんど見過ごされてきました。今後暗号資産は、課税の枠組み全体にも重要な側面を形成していくと考えられます。
OECDでは、この報告書を参考にすることは、明確な納税義務と待遇を確立して企業の活動の確実性を向上させコストを最小限に抑えるのにも役立つと言及しています。
Ⅱ.暗号資産の税目
各国の具体的な課税への取り組みとして『所得税』『財産税』『消費税』の課税事情がOECDにより調査報告されております。
※ 今回は「所得税」を中心とし、「財産税」「消費税」の内容は次回に記載いたします。
【暗号資産 と 仮想通貨について】
暗号資産とは、ペイメントトークン・ユーテイリテイトークン・セキュリテイトークンの3つに分けられます。このうちペイメントトークンを仮想通貨と呼んでいます。
暗号通貨の中では、主に流通しているこの仮想通貨の課税が多く議論されています。
(global business finance 2019,欧州銀行監督機構2019定義)
Ⅲ.OECD報告書の概要
OECD報告書は次の4つのセクションから成り立っています。主な課税ポリシーは、仮想通貨にかぎらずマイニングなどを含めた仮想空間における暗号資産の作成過程まで関連しています。
・作成から消却されるまでのライフサイクル段階での課税について
・リブラなど中央銀行が発効するデジタル通貨の台頭とアルゴリズムの発展や分散型金融の台頭など
2)租税政策上の検討事項と国ごとの取り扱いの比較
・各国の「所得税」「財産税」「消費税」の比較分析と課税の枠組み
3)暗号通貨が課税政策に与える影響
4)各国への提言と検討事項
Ⅳ. 仮想通貨の各国における税務上の定義
上記セクション②の報告内容より、各国の税務を判断する上での、仮想通貨の捉え方は下覧のように各国で異なっています。
Source:Table 2.1. Examples of definitions of virtual currencies for tax purposes
Ⅴ. 仮想通貨のどのような取引が課税関係を生成するのでしょうか
下記は、OECDが各国の仮想通貨の捉え方を図に表したものです。
少数の国では、個人による交換が仮想通貨の保有者にとって課税対象となるイベントであるとは考えていません。
➣これらの国にグレナダ、イタリア、オランダ、ポルトガル、スイスが含まれます。
2)課税は有りと回答した国
そして、回答者の国のかなりの割合は、仮想通貨自体は、その資産の処分まで税金は支払われないが処分時に課税すると示しています。さらに多くの管轄区域では、所有者または使用目的に応じて仮想通貨の交換に対して異なる税制上の取り扱いを行います。
この区別は、所有者のステータス(個人対事業主など)、取引の性質または金額 (通常取引または取引価格)、または活動がビジネス活動を構成すると見なされるかどうかによって判断される可能性があります。
➣これらの国は、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、エストニア、フィンランド、フランス、ギリシャ、アイルランド、イスラエル、日本、ルクセンブルク、オランダ、スロバキア共和国、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、英国などがあります。この国のグループの中から適用される税務上の取り扱いの例は様々です。
3)日本で仮想通貨にかかる課税取引が発生する場合
例えば、日本では、臨時的な取引によって生じる収入と、恒常的取引によって生み出される収入をビジネスとして区別します。日本の税法では、臨時的の仮想通貨取引による所得は、原則として雑貨所得に分類され、ビジネスとしての仮想通貨取引から得られる所得は事業利益に分類されます。最後に、仮想通貨は、商品の支払いで交換される可能性があり、この場合は課税対象となります。
Ⅵ. 仮想通貨の各国の『所得税』の取り扱い
仮想通貨の所得税には課税対象となるイベントが数多くあり、そのほとんどは仮想通貨自体の処分の段階で考慮されています。
多くのほとんどの国では、Ⅳ.表記載のように仮想通貨を金融資産、のれん以外の無形資産または商品と認識し、財産の一形態として課税します。
したがって、資産は、ほとんどの管轄区域で資産を生み出すキャピタルゲインとして扱われ、まれにビジネスまたは雑多な収入を生み出すものとして扱われます。
この場合の所得税の課税タイミングは次のようになります。
①仮想通貨の処分または交換時に発生する。
②法定通貨交換時は発生しない。
③仮想通貨をサービス・商品・賃金に交換すると課税対象とする。
④偶発的な場合はキャピタルゲイン課税
⑤事業の一環では、事業上もしくは資本的な所得や欠損金が発生した場合は、課税もしくは損金算入となる。
2)マイニング時の所得税
回答者のほとんどの国は、最初の所得税イベントは新たに作成されたトークンの受け取りに行われることを示しています。
➣これらの国には、アンドラ、アルゼンチン、オーストリア、コートジボワール、コロンビア、クロアチア、エストニア、フィンランド、日本、ルクセンブルク、ニュージーランド、ノルウェー、スロベニア、南アフリカ、英国、米国が含まれます。
(マイニング時の課税方法)
受取時に課税される場合、受け取った仮想通貨の単位の価値は、トークンを受け取ったときに課税所得(その他の資本所得、または雑貨所得)に含まれ、収入の控除に関連する原価のあと、所得税は個人または法人の所得税率で、その所得カテゴリ内の通常のレートが適用されます。
3)仮想通貨の所得税の減免
国によって、最低保有期間の終了時のキャピタルゲイン規則、減額率、または仮想通貨所得免除により、課税が減免されるような場合は、その国の個人所得として課税されるシステムに対する取り扱いが緩和されます。
一方、企業や事業での取引では、事業損益に吸収されるため、損失がより広く控除されることを意味します。
また、Ⅴ.に記載のように暗号資産に課税しない国も存在している他、仮想通貨を贈与したり、盗難、紛失を含む処分については、OECDのガイダンスでカバーされることはほとんどありません。このため仮想通貨の所得税減免のアプローチは各国によって異なります。
これら仮想通貨の課税への動向は、金融機関やフィンテック企業にとっては特に重要となっていますが、他にもあらゆる業種の納税者に影響を及ぼすことになります。
OECDは、この報告書を通して、仮想通貨の税政策の枠組みを改善しようとしている政策立案者をサポートし重要で多くの洞察テーマと考慮事項を提供しています。
See)
※1【Report : Taxing Virtual Currencies: An Overview of Tax Treatments and Emerging Tax Policy Issues/OECD】
*Tax policy is relevant in the virtual currency space.
*Key findings
*Foreword
*2.2. Income taxation: overview of treatments and taxable events
*2.2.1. Creation of virtual currencies: taxable events
*2.2.2. Disposal of virtual currencies: taxable events