米国の源泉徴収減税のための届出書(FATCA関連含む)
米国の源泉徴収減税のための届出書(FATCA関連含む)

著者プロフィール

金田一 喜代美

金田一 喜代美(きんだいち きよみ)

中央大学法学部国際企業関係法学科、中央大学専門職大学院(MBA取得)、慶應義塾商学研究科修士課程修了。
大手監査法人にて上場準備経験有。
近年は、米国、豪州、シンガポール、等の相続法務税務、ITIN・Trust等諸手続きコンサルテーションに従事している。

【執筆】
「マンガでわかるかんたんQ&A」、「知って得するやさしい税金」、「相続から創続へ」、「国際相続・贈与がざっくりわかる~海を超える次世代資産~」、「税経通信」令和2年3月号 国際資産税特集 “財産取得者の納税義務の判断とその課税関係の調査” 等。

【Blog】
TAXINFOMATION

米国の源泉徴収減税のための届出書(FATCA関連含む)

概要

 日本居住者が、米国において収入が発生した場合において、その米国の所得税の「免除」や「減税」を受けるためには一定の届出が必要になります。
 その者の源泉徴収減税のためには、各支払事業者(A)にフォームW-8という書式を提出する必要があります。
フォームW-8にはいくつかの種類がありますのでその内容を記載いたしました。

米国の “フォームW-8” は改定されました

 2017年1月6日に、米国財務省と米国歳入庁(IRS)は、第3章(TD 9808)と第4章(TD 9809)に基づく特定の規制を最終決定し、これらの最終規制の特定の規定を補足するために源泉徴収課税 第3章と第4章に基づく一時的な規制を公開しました。とりわけ、第3章(源泉徴収の対象となる金額)および第4章(源泉徴収義務者)に基づく最終および一時的な規制により、FATCAを織り込んでのフォームW-8の区分、内容、有効期間、および源泉徴収義務者に関する特定の要件が変更されました。

( A. 米国での源泉徴収義務者について)
 源泉徴収義務者には、個人、企業、パートナーシップ企業、信託、協会、または特定の外国の銀行や保険会社の外国の仲介業者、外国のパートナーシップ、または米国支店を含む(ただしこれらに限定されない)その他のエンティティも含んでいます。
 また、外国のパートナーに有効な課税所得(ECTI)を割り当てた場合、そのパートナーシップ企業は通常源泉徴収義務者であり、フォーム8804、パートナーシップ源泉徴収税の年次申告書(セクション1446)、フォーム8805、フォーム8813も提出する必要があります。

==米国の源泉徴収 “減税等” のための各種届出書==
日本居住者が、米国において収入が発生した場合において、その米国の所得税の「免除」や「減税」を受けるための届出書式は、実際には次のようなものが列挙されます。

Form W-8 BEN(個人用)

1)≪米国源泉徴収対象の受益者の米国非居住者ステイタス証明書(個人)
(Certificate of Foreign Status of Beneficial owner for United States Tax Withholding and Reporting (Individuals)

2)Form W-8 BENの提出の役割
 次のような役割があります。
  1.日本居住者である(米国非居住者)である証明になる
  2.届出の対象となる所得の実質的な受取人であることの申請になる
  3.租税条約による税額の軽減や免税の申請ができる

3)提出先
 個人である日本居住者(米国非居住者)が、米国の金融機関、米国法人等から受取利息・配当金、売却益などを受け取る場合に、Form W-8 BENを金融機関等の源泉徴収義務者や所得の支払者に提出します。

4)記載内容の特例
 個人納税者番号 SSNやITIN(https://manitax.jp/post-3724/)を記載することが原則ですが、その目的となる所得が次の場合には記載が省略できます。
 *上場されている株式からの配当・利子
 *登録証券会社からの償還配当
 *上場・登録されている投資ファンドからの利子・配当等
 *上記に関連するローンからの利息

Form W-8 BEN-N(個人以外)

1)≪米国源泉徴収対象の受益者の米国非居住者ステイタス証明書(個人以外)
(Certificate of Foreign Status of Beneficial owner for United States Tax Withholding and Reporting (Entities)

★このFormはFATCAに関連して、個人以外の者のための届出として追加されました。

2)Form W-8 BENの提出の役割
 次のような役割があります。
  1.日本居住者(米国非居住者)である証明になる
  2.届出の対象となる所得の実質的な受取人であることの申請になる
  3.租税条約による税額の軽減や免税の申請ができる

3)提出先
 日本の個人以外の居住者(米国非居住者)が、米国の金融機関、米国法人等から受取利息・配当金、売却益などを受け取る場合、その他の源泉対象になる受け取り収入がある場合に、Form W-8 BENーEを金融機関等の源泉徴収義務者や所得の支払者に提出します。

Form W-8 BEN-ECI(個人以外)

1)≪稼得が米国の実質関連ビジネス所得等である旨の米国非居住者申請証明書
(Certificate of Foreign Person’s Claim That Income Is Effectively Connected With the Conduct of a Trade or Business in the United States)

2)Form W-8 BEN-ECIの提出の役割
 次のような役割があります。
  1.日本居住者(米国非居住者)である証明になる
  2.届出の対象となる所得の実質的な受取人であることの申請になる
  3.租税条約による税額の軽減や免税の申請ができる

3)提出先
 日本の居住者(米国非居住者)が、米国で “USIEC所得(米国ビジネス関連所得)”または、“USIEC所得とみなされる所得(不動産賃貸所得)等がある場合、源泉徴収の代わりに米国の非居住者申告を行う必要があります。
この場合は、Form W-8 ECIを源泉徴収義務者や所得のその支払者に提出します。

4)例外的な扱い
=フォーム1042-Sで報告可能な想定元本契約の場合=
USIEC所得がある場合は、基本的にForm W-8 BEN-ECIの提出が必要ですが、次の場合は提出が必要でなくなります。“想定元本契約で支払われる収入および特定の米国支店への支払い”には例外があります。
 フォームW-8 ECIが提供されているかどうかに関係なく、想定元本契約の条件に基づいて支払われた金額には、30%の源泉徴収は必要ありません(そのような契約に基づいて行われた支払いが、配当相当額などの米国の源泉所得である場合を除く)。収入が米国の貿易または事業の実施に効果的に関連している場合は、フォーム1042-Sで報告できます(支払いが米国の源泉所得であるかどうかは関係ありません)。
フォームW-8 ECIが受領されていない場合、所得が米国に所在する外国人の適格な事業単位に支払われる場合、または所得が米国の貿易または事業の実施に効果的に関連しているものとして、事業あつかいの所得と扱うことになります。
ただし、支払い先がフォームW-8 BEN-Eを提供している場合は、支払いが米国の貿易または事業に効果的に関連する収入ではないことを表明している場合は、支払いは米国の貿易または事業の実施に効果的に関連する収入として扱われず源泉徴収対象になります。
また、USIEC所得のある者が源泉徴収せずに申告方式で申告をする場合には、IRSに882(d) election‘(選択)をすることで経費が控除できる仕組みになっていますが、小規模事業ではあまり運用されていないのが実態です。

その他のW-8 の書式

① Form W-8 EXP
≪米国の源泉徴収および申告のための外国政府またはその他の外国組織の証明書≫

② Form W-8 IMY
≪外国の仲介業者の証明書≫
外国のスルーエンティティ又は米国の源泉徴収および報告のための特定の米国支店の証明書。

非IRSフォーム:報告可能な金額を受け取っていない個人のために

 個人である口座名義人を文書化するのは金融口座機関ですが、口座名義人に報告可能な金額の支払いを行っていない場合は、フォームW-8 BENの代わりに非IRSフォームを使用できます。フォームには、受取人個人の名前と住所、個人が税務上の目的で居住しているすべての国、生年月日、居住国ごとの納税者識別番号を含め報告します。このフォームでは、米国またはその他の国での税務またはマネーロンダリング防止(AML)の監査に必要なその他の情報を要求する場合もあります。これらの要件を満たすフォームは、パートナーの管轄区域がそのような処理を拒否しない限り、該当する租税条約の目的のために同様の合意されたフォームとして扱われます。一般に、個人向けの非IRSフォームには、偽証罪の罰則に基づいて作成された署名済みの日付付きの証明書が含まれている必要があります。ただし、フォームに個人の主張を裏付ける証拠書類が添付されている場合は、この限りではなく、証拠書類は、規則セクション1.1471ー3(e)および1.1471ー4(c)(4)(i)に記載されているように、口座に米国の印がある受取人の場合には同様の裏付ける証拠書類である必要があります。

W-8 BENにおける共通事項

1)提出しない場合
 提出を失念した場合は、最高税率で源泉所得税が徴収されたり、源泉徴収の段階で租税条約の軽減を受けられない事態が発生します。

2)有効期限
 一般的には3年が有効期限ですので、それ以降あらたに適用を受ける場合は再度提出が必要になります。

See//IRS: About Instructions for the Requester of Forms W-8 BEN, W-8 BEN–E, W-8 ECI, W-8 EXP, and W-8 IMY (renewal date: 2018/5/17)