平成28年度の税制改正により、税務調査に大きく影響ある項目として、新たに「調査通知」ができたことで、加算税(5%・10%)がいつの時点で課されるのかが非常にややこしくなりました。
調査通知の規定ができたことで、過少申告加算税の事務運営指針も改正されていますので、本稿ではこれらの点を解説します。
修正申告した場合における過少申告加算税の3類型
修正申告を提出する場合の過少申告加算税は、以下の3パターンに分かれます。
②調査通知後~更正の予知前:5%
③更正の予知後:10%
なお、調査通知の定義と加算税の関係はこちらをご覧ください。
「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/kasan.pdf
調査通知を盛り込んだ事務運営指針の改正内容
調査通知は起点となる基準がわかりやすい・明確なのですが、更正の予知についてはいまだ不明確で、結局、調査のどのタイミングで修正申告を提出すれば加算税が課されるのか、ハッキリしません。
事務運営指針が平成28年12月に改正されていますので、この点を確認しておきましょう。
「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_01/00.htm
まず調査通知の時期と加算税の関係ですが、事務運営指針では下記と定められています。
3(調査通知に関する留意事項)
通則法第65条第5項に規定する調査通知(以下「調査通知」という。)を行う場合の同項の規定の適用については、次の点に留意する。
(1)通則法第65条第5項の規定は、納税義務者(通則法第74条の9第5項に規定する場合に該当するときは、納税義務者又は同項に規定する税務代理人)に対して調査通知を行った時点から、適用されない。
①当該調査通知に係る調査について、通則法第74条の11第1項の通知をした後又は同条第2項の調査結果の内容に基づき納税義務者から修正申告書が提出された後若しくは通則法第29条第1項に規定する更正若しくは通則法第32条第5項に規定する賦課決定をした後に修正申告書が提出された場合
更正の予知はどの時点なのか?
「更正の予知」の時期については、上記事務運営指針では下記のように規定されています。
2(修正申告書の提出が更正があるべきことを予知してされたと認められる場合)
通則法第65条第1項又は第5項の規定を適用する場合において、その法人に対する臨場調査、その法人の取引先の反面調査又はその法人の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該法人が調査のあったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合の当該修正申告書の提出は、原則として、これらの規定に規定する「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当する。(注) 臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当しない。
ここで確定的に言えるのは、調査の初日(臨場)前であれば、更正の予知に該当しないので、上記3パターンの②に該当するということです。
いまだ確定的ではない更正の予知の時期
この事務運営指針の書き方が曖昧なのですが、「更正の予知」に該当するかどうかは、
【調査開始~(具体的な)非違事項の指摘】
のどこかにある、としか言えません。
以前は調査通知なる概念がなかったので、事前通知があっても調査初日までに修正申告を提出しておけば、加算税も重加算税も課されない、という単純な理解で済んでいましたが、調査通知の規定により5%の加算税も加味して考える必要があります。
事務運営指針も改正されていますので、この点も合わせて理解しておかなければなりません。