さて、更正の除斥期間は原則として「5年」と定められています(国税通則法第70条第1項)。
税務上の時効は最大で「7年」ですが、6~7年前については、国税通則法第70条第4項の規定により、「偽りその他不正行為」があった場合に遡ることになっており、あくまでも「偽りその他不正行為」を認定するのは国税側の問題ですから、自主修正申告は最大でも5年と理解することができます。これが原則となる考え方です。
東京局法人課税課が出している「法人課税内部事務質疑応答集」(この内部規定を検索等で見ることはできません)には、「7期分の自主修正があった場合の取り扱い」という項目があり、
「当該申告書は無効であり、取り下げをしょうようする。応じない場合は、申告書の効力のない旨の通知を行う。偽りその他不正の行為に基づく場合以外の更正又は決定は法定申告期限から5年を経過した日以後は行うことができないとされる70条の規定は、課税庁のみを拘束するものであり、納税者までをも拘束するものではない。」
とあって、自主修正申告の場合、6~7年前を提出できないと国税側が判断していることがわかります。
自主修正申告は3年か5年か?
ここで判断に悩むのが、誤りがあった場合に「5年以内の何年分の修正申告を事前に提出すべきか?」という点です。まず、下記の前提条件として解説します。
- 事前通知は3年(3期)分
- 事前に見直したところ明らかな誤りがあった
- その誤り箇所は過去からずっと続いている
この場合において、3年分の修正申告を提出するリスクは、調査において5年分遡られることです。
Aの誤りを是正した修正申告を3年分調査前に提出
⇒
調査においてBという別の誤りが発覚した
⇒
Bは4~5年前も誤っている
⇒
調査で4~5年前に遡られる(調査期間の延伸)
⇒
結局、Aの4~5年前も否認対象になる
「調査対象期間が3年から5年に延びる要件」
https://kachiel.jp/?p=13657
3年分か5年分かを判断する基準
事前に何年分の修正申告を提出するかは、大きく2つの判断要素があると考えてください。
一方で、他にも誤りなどが容易に想定できる(自信がない)場合は、5年分の修正申告を提出しておいたほうが無難とも考えられます。また上記Bなど他に誤りがあったとしても、調査期間が4~5年前に延伸されるとは断言できません。結果として、3年分で終わる可能性もあるでしょう。
一方で、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する調査対象年分については、事前の修正申告に対して5%の加算税、それ以前分は加算税が課されないことに区分する必要があります。
例えば、令和元年の秋に事前通知を受けた税務調査事案において、3月決算法人で3期分は「平成31年3月期」「平成30年3月期」「平成29年3月期」となり、事前の修正申告をしても5%の加算税が課されますが、調査対象が5期分と考えると、「平成28年3月期」「平成27年3月期」は加算税が課されない期間になり、加算税の差額は5%と10%と相違することになります。この差を大きいと考えるのか小さいと考えるのかは顧問先や税理士によって相違するとは思いますので、そこは考え方・意向によって修正申告を提出する年分が相違するものと考えます。
ただし、誤り箇所が重加算税の対象となると危惧される場合は、35%の差分になりますし、重加算税を課されるリスクは高いですから、保守的に5年分の修正申告をしておくべきでしょう。
贈与の場合は注意が必要
さて、ここで1つ注意が必要なのは、更正の除斥期間は原則として5年ですが、贈与税については6年となっています。
ですから、相続が発生し、贈与税の申告をしていないことが発覚した際に、贈与税の期限後申告を提出することになった場合、最大で5年ではなく、6年分の期限後申告を提出することになります。
この点も注意して、自主修正申告・期限後申告を提出する年分を考慮する必要がありますので、ぜひ注意してください。