本稿の前回では、理由附記の法律根拠を整理して解説しました。
ただ、この時点ではまだ漠然としか理解できていない方も多いと思いますので、今回は個別的なケースについて具体的に解説しましょう。
附帯税の理由附記
税務署が行う処分の最たるものは、税務調査の結果として増額更正をすることですが、それ以外にも処分は多数存在します。
例えば、税務調査の結果として、指摘事項に納得しているので修正申告を提出した場合であっても、加算税・延滞税は別の(賦課)処分となります。
では、本税とは別処分である加算税や延滞税の賦課処分について、理由附記はどうなるのでしょうか。
加算税については、納税者に対する【不利益】処分となりますから、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税など、各種加算税の賦課決定すべてにおいて、理由の附記が必要となります。
加算税で争うケースで一般的に多いのは、2つのケースがあり、
過少申告加算税
税務調査ではなく、行政指導の結果としての修正申告となれば加算税は課されないことを争うケース
または、
重加算税
税務調査(の事実認定)において仮装・隠ぺいを争い、重加算税を賦課されてしまったケース
になることが多いのですが、争う場合は理由附記の内容が争点になります。
一方で、延滞税ですが、こちらは加算税と同じく本税とは別の処分ですが、理由附記はなされないことになります。
なぜなら、国税通則法第15条により、延滞税(及び利子税)は、課税要件事実が生じたときに成立し、成立と同時に特別の手続を要することなく確定する国税であることから、理由附記が必要となる処分ではないという理解です。
更正の請求であれば理由附記は要するのか?
Q
納税者にとって不利益な処分であれば理由附記が必要という理解ですが、では、更正の請求や職権による減額更正について理由附記はどうなるのでしょうか。
まず、更正の請求がすべて認められた場合のケースで考えてみます。
更正の請求が全部認容された場合、結果として税務署は減額更正をすることになりますが、理由附記の観点からは2つのケースに分かれます。
青色申告者に対する減額更正
青色申告者に対する更正(所得税にあっては、不動産所得、事業所得又は山林所得に係る更正)については、たとえ減額更正であっても、所得税法または法人税法において理由附記をすることが必要とされていますので、理由附記を行われることになります(この場合、納税者の主張がすべて通っているので争いになることはないとは思います)。
青色申告者以外に対する減額更正
更正の請求を全部認容する場合には、減額更正処分は不利益処分に該当しないため、理由附記は行われないことになります。
これらは、理由附記の根拠条文が相違するからなのですが、この点について理解できない方は、本稿の前回を読み直していただければと思います。
では、更正の請求の全部が認められない場合または一部が認められない場合については、理由附記はどうなるのでしょうか。
更正の請求があった場合において、(調査の結果)更正の請求の全部または一部が認められない場合、「更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知書」が届くことになりますが、これは【申請に対する拒否処分】に該当しますので、通知書に理由附記が行われることになります。
青色申告の却下と取消し
今回取り上げる事例では最後となりますが、青色申告の届出については下記のようになります。
まず、青色申告の承認申請が却下される場合ですが、理由附記がなされることになります。
前回の税務調査などで青色の取消しになった場合など、青色申告の承認申請が通らないケースもあります。この「却下」は申請により求められた承認を拒否する処分に該当しますので、理由附記があるということです。
また、税務調査などで青色申告の承認の取消しがされるケースでは、所得税法第150条第2項、法人税法第127条第2項において、取消しの処分の基因となった事実が取消事由のいずれに該当するのかを附記しなければならないと規定されていることから、理由附記がなされることになります。
このように、理由附記も各ケースごとに要・不要を精査していくと、法的要件の理解が深まりますので、ぜひ参考にしてください。