加算税が減免される要件について詳しい税理士は多いと思いますが、本稿では「延滞税の減免措置」に関して解説します。
加算税の減免措置については、そのパターンが多岐にわたりますが、延滞税についてはそこまでパターンはありません。本来は免除が適用されるべきケースにおいても、延滞税が誤って賦課されている場合もありますので、注意が必要となります。
延滞税免除の法律規定
まず、延滞税の免除を規定しているのは、国税通則法第63条6項になります。
6 国税局長、税務署長又は税関長は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該各号に規定する国税に係る延滞税(前各項の規定による免除に係る部分を除く。)につき、当該各号に掲げる期間に対応する部分の金額を限度として、免除することができる。
一 第五十五条第三項(納付委託)(第五十二条第六項(保証人からの徴収)又は国税徴収法第三十二条第三項(第二次納税義務者からの徴収)において準用する場合を含む。)の規定による有価証券の取立て及び国税の納付の再委託を受けた金融機関が当該有価証券の取立てをすべき日後に当該国税の納付をした場合(同日後にその納付があつたことにつき当該有価証券の取立てを委託した者の責めに帰すべき事由がある場合を除く。) 同日の翌日からその納付があつた日までの期間
二 納税貯蓄組合法(昭和二十六年法律第百四十五号)第六条第一項(租税納付の委託)の規定による国税の納付の委託を受けた同法第二条第二項(定義)に規定する指定金融機関(国税の収納をすることができるものを除く。)がその委託を受けた日後に当該国税の納付をした場合(同日後にその納付があつたことにつき納税者の責めに帰すべき事由がある場合を除く。) 同日の翌日からその納付があつた日までの期間
三 震災、風水害、火災その他これらに類する災害により、国税を納付することができない事由が生じた場合 その事由が生じた日からその事由が消滅した日以後七日を経過した日までの期間
四 前三号のいずれかに該当する事実に類する事実が生じた場合で政令で定める場合 政令で定める期間
ここでは、5つのパターンが存在することを理解しましょう。
(1)証券による納付委託の場合:通則法63条6項1号
(2)納税貯蓄組合預金による納付委託の場合:通則法63条6項2号
(3)災害等の場合:通則法63条6項3号
(4)交付要求の場合:通則法63条6項4号・通則令26条の2第1号
(5)人為による異常な災害等の場合:通則法63条6項4号・通則令26条の2第2号
「人為による異常な災害等の場合」とは?
さて、ここでは実務上の関わりが多い、上記(5)について解説します。
上記(5)の「人為による異常な災害等」については、通則令26条の2第2号で、「火薬類の爆発、交通事故その他の人為による異常な災害又は事故」として規定されていますが、「火薬類の爆発、交通事故」以外の「人為による異常な災害又は事故」に含まれる具体的な態様として、法令解釈通達において、次のようなケースが示されています。
「人為による異常な災害又は事故による延滞税の免除について(法令解釈通達)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/chosyu/010622/01.htm
a 誤指導
b 申告書提出後における法令解釈の明確化等
c 申告期限時における課税標準等の計算不能
d 振替納付に係る納付書の送付漏れ等
e 上記(1)~(4)の類似事由
特に留意すべき点として、上記aとbについては、加算税の免除規定である「正当な理由」(国税通則法第65条第4項)と重複している要件となっています。
少し話が逸れますが、「更正の予知」に該当しない場合、加算税の減免規定があります。
具体的には、自主修正申告をすれば加算税は免除(0%)ですし、調査通知を受けた後で、かつ調査の初日前に自主修正申告を提出すれば加算税は5%に減免されることになります。
これらのケースで、自主修正申告を提出しても延滞税は課されることになります。なぜなら、「更正の予知」のケースについては延滞税の減免規定がないからです。
一方で、「(税務署職員による)誤指導」や「申告書提出後における法令解釈の明確化等」については、その要件事実が認められた場合、加算税も延滞税も免除規定があることになります。
ですから、これらのケースにおいて、加算税の免除を受けたのであれば、延滞税も同時に免除されなければおかしいである、ということに気付かなければなりません。
延滞税減免の実務的な対応
加算税・延滞税の減免をする場合、(管理徴収部門ではなく)課税部門において決議・処理されることになるのですが、課税部門は附帯税に詳しくないことから、延滞税の免除処理を漏らす可能性がありますので、ぜひ注意してください。
また、延滞税の免除については、国税通則法以外の各税法において規定しているものがあり、さらに、延滞税の計算期間の特例といった形で実質的に延滞税の免除を規定しているものもあります。
例えば、相続税法第51条2項は、他の共同相続人が被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受け、その受けた財産が相続税の課税価格計算に算入されていないことを申告期限後に知ったことなど、相続税特有の後発的事由等による期限後申告書又は修正申告書の提出により納付すべき税額については、法定納期限の翌日からこれらの申告書を提出した日までの期間を延滞税の計算期間に含めない旨を定め、実質的に、当該期間に係る延滞税を免除することとしています。
なお、この相続税法51条2項各号に掲げる事由が生じたことは、相続税の過少申告加算税の取扱いについての事務運営指針において、通則法65条4項1号に規定する「正当な理由」があると認められる事実として取り扱うこととされています。
「相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sozoku/170111_1/01.htm
加算税に関して詳しい方は多いとは思いますが、併せて延滞税の免除規定も知っておく必要がありますので、ぜひ上記を理解してください。