税務相互相談会の皆さん
下記について教えて下さい。
【税 目】
法人税,所得税<譲渡所得>(武田秀和税理士),公益法人(浦田泉税理士)
【対象顧客】
個人
【前 提】
個人所有の土地(地域の有志18名の共有になっている)を
一般社団法人(令和6年2月設立)へ贈与することを考えています。
共有者の一部は、昭和3年から登記変更されていないなど
所有者不明土地になっており、不明土地の所有権移転登記はしない。
一般社団法人の理事6名、監事2名(理事・監事の中に同族関係者はいない)の持分を一般社団法人へ贈与する。
土地の半分は、お稲荷様が祀られており、地域の信仰の象徴となっている。
神社としての登録はされておらず、現在に至っている。
お稲荷様の横には庚申塔があり、市の指定文化財(民俗文化財)となっている。
土地の半分は、貸駐車場(土地所有者とは関係ない第3者に貸している)として使用し、
その資金は、お稲荷様の維持管理に充てられている。一般社団法人に贈与した後も貸駐車場として使用します。
お稲荷様が祀られている土地と駐車場として貸している土地は、1筆となっており、分筆されていない。
一般社団法人は、法人税法第2条第9号の2(イ)法人税法施行令第3条1項
「非営利性が徹底された法人」の要件を満たしています。
【質 問】
土地所有者の課税関係及び一般社団法人の受贈財産の課税関係について、
下記の見解で差支えないか照会致します。
(1)土地所有者
①所得税法第59条(みなし譲渡)により土地持分の譲渡があったものとみなされる。
②"租税特別措置法第40条(公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例)"は、
財産を贈与があった日から2年以内に公益目的事業に供することを求めています。
共有の場合、 不動産の利用形態を変更したり、不動産の使用収益の方法を変更するには、
共有者全員の同意が必要となります。共有者の中にだれか1名でも公益目的事業に反対する人が居ると
公益目的に使用することができなくなります。(民法第251条)
共有者は、所在不明な方もいるため、全員の同意を得ることは現在不可能な状態です。
措置法令第25条の17第5項第2号関係通達 13(財産等が公益目的事業の用に直接供されるかどうかの判定)により、
贈与財産そのものが、公益法人等の公益目的事業の用に直接供される必要があり、貸駐車場部分は、公益目的事業の用に供されない。
<照会者見解>
譲渡した持分の全てが、租税特別措置法第40条の適用はできず、所得税法第59条(みなし譲渡)
により土地の譲渡所得税申告が必要となると考えます。
(2)一般社団法人
①一般社団法人は、法人税法第2条第9号の2に規定する「非営利性が徹底された法人」に該当し
収益事業を行う場合に限り法人税の納税義務が生じます。
貸駐車場運営は、法人税法第2条第13号及び法人税法施行令第5条第1項第5号に規定する収益事業に該当し、
貸駐車場として使用されている土地半分は、収益事業に属する資産等として区分経理します。
法人税基本通達15-1-6 施行令第5条第1項《収益事業の範囲》に規定する
「その性質上その事業に附随して行われる行為」で収益事業に属する固定資産等を
処分したことにより生じた損益は、その収益事業の付随行為に係る損益となることとされています。
法人税基本通達15-2-12(1)は、固定資産の取得又は改良に充てるために交付を受ける補助金等の額は、
たとえ当該固定資産が収益事業の用に供されるものである場合であっても、
収益事業に係る益金の額に算入しないと規定されています。
<照会者見解>
贈与による土地の取得は、法人税基本通達15-2-12(1)の補助金等と何ら変わるものではなく、
実質的な元入金のようなものであり、収益事業に係る収益には該当しないと考えます。
よって、課税部分は、発生しないと考えます。
②相続税法第66条第4項の規定により個人から法人に土地を贈与等し、贈与等した個人の
贈与税・相続税が不当に減少する場合には、一般社団法人を個人とみなして贈与税が課税されます。
設立した一般社団法人は、相続税法施行令第33条3項及び4項の規定上並びに個別通達
「贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び持分の定めのない
法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについての第2 持分の定めのない法人に対する贈与税の取扱い」上、
相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められないように運営していくつもりです。
<照会者見解>
設立した一般社団法人は、理事会設置法人であり、理事・監事の人数も満たしており、
理事会も要件を満たすよう運営していくつもりです。
よって、贈与による土地の取得は、贈与等した個人の贈与税・相続税が不当に減少するものでは
ないため、贈与時に贈与税が課税されることはないと考えます。
【参考条文・通達・URL等】
法人税法第2条第9号の2(イ)法人税法施行令第3条1項
所得税法第59条(みなし譲渡)
租税特別措置法第40条
措置法令第25条の17第5項第2号関係通達 13(財産等が公益目的事業の用に直接供されるかどうかの判定)
法人税法第2条第13号及び法人税法施行令第5条第1項第5号
法人税基本通達15-1-6
法人税基本通達15-2-12(1)
相続税法第66条第4項
相続税法施行令第33条3項及び4項