[soudan 10688] 個人向けの長期未収入金に関する貸倒損失処理について
2025年5月09日

税務相互相談会の皆さん
下記について教えて下さい。

【税  目】

法人税(中川輝美税理士)

【対象顧客】

法人

【前  提】

・A協同組合(3月決算)は約50社の組合員を有する事業協同組合である。
・平成26年頃事務員甲による不正が発覚、組合の多額の金員が横領された。
・Aと甲とは平成27年4月に示談書を締結しその後の支払い等について合意している。

・示談書の内容は以下の通り
1.示談日現在の債務残高:1,544万円
2.各月返済は月7万(7月12月に各8万)で年間100万円返済
3.支払が遅れたら年5%の延滞利息を課す
4.2回以上連続で支払いを怠ると期限の利益を失う
5.その他破産、債務整理等も同様
6.連帯保証人を探すこと

・ただし上記示談書の他、帳簿上不突合になる部分があり、不突合になった金額も甲に責があるとの認識で、
甲に対する帳簿上の未収入金残高は示談を締結した事業年度において2,751万円とし、
・当該未収入金の平成28年3月期末残高は2,645万円であった
・当該金額に関して平成29年3月期から平成31年3月期までの期間で全額貸倒引当金を計上している
・貸倒引当金は損金算入要件を満たさず、すべて損金不算入として申告調整している
・令和5年3月末現在の未収入金残高は2,322万円であった
(この間300万円強返済されたことになる)
・回収の状況としては月に5万円程度、この時点までは長期間の返済が途絶えたことはなかった。
・令和6年3月期に入り返済が全く行われず、令和5年4月に5万円の返済があったのを最後に返済は途絶えた。
・令和6年3月現在で本人転居により連絡が取れず、住所も不明となっていた
・令和6年度に入り組合では理事長及び事務局長が区役所に赴き所在を辿り、転居後の所在を特定した。
・実際に住所地まで訪ねたが本人に面会することはできなかった。
・転居後の住所に内容証明郵便を2度送達したが受け取られることなく返送されてきた。
・法的整理が行われている事実などは不明である。(確認している限りは自己破産などはしていなさそう) 

基本的には行われていないと判断している。
・このほか法テラスでの弁護士相談を利用した。
ここでは、かかる状況から差し押さえなどの手続きを取った場合でも、

回収コストを上回る金員の回収はできないのではないかという見解があった。
・したがって弁護士費用などコストをかけて差し押さえなどを行うことは断念した。
・組合では令和7年3月期決算において当該長期未収入金の貸倒処理することを考えている。

【質  問】

以上の事実関係に基づき、貸倒損失を計上するとした場合、
貸倒損失を計上できるとした場合の根拠は法人税基本通達でいうところの9-6-2になると考えております。

この場合の、
「全額が回収できないことが明らかになった」という事実については
なお、事実認定の色合いが強いとは思いますが、長期間(概ね1年以上)返済が途絶える、本人に会えない状況、
回収努力として 内容証明郵便の送達(未達)、法テラスでの弁護士相談及びその指導併せて今回の決算理事会において、

貸倒処理を行うという理事会決議の存在という事実に基づいて処理することが
貸倒損失処理の根拠となるかご教示いただきたくよろしくお願いいたします。
また、示談書以上の金額を貸倒処理することの是非についてもご意見をいただけますと幸いです。
なお、本件貸倒処理をしたとしても債務免除は行わないため、
仮に、後日の税務調査で否認されこの期での損金不算入となった場合、

その処理としては長期未収入金計上漏れとして、加算(留保)の処理になりますでしょうか。
その場合は(高齢の為)将来の本人死亡、自己破産などの事実をもって9-6-1法律上の貸倒で

処理する機会は残されているでしょうか?(調査での否認時点で寄附金のような処理になってしまわないでしょうか?)

併せてご意見をいただきたく、よろしくお願いいたします。

【参考条文・通達・URL等】

金銭債権の貸倒れ
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_06_01.htm