[soudan 08374] 譲渡所得の取得費の計算及び砂利敷きについて
2025年2月03日

税務相互相談会の皆さん


【税  目】

所得税<譲渡所得>(武田秀和税理士)

【対象顧客】

個人

【前  提】

(1)Aは相続により駐車場を取得した。
相続開始日はR4.7月、遺産分割協議はR5.5月、土地の取得日はH22.5月。
相続人は3人だが、当該駐車場は遺産分割協議によりAが単独で取得することになった。

(2)当該駐車場は、被相続人が貸し付けていたときから、
  固定資産税相当額以下で貸付けており、実質的に使用貸借状態であった。

(3)当該駐車場には、被相続人がH23.10月に
設置したフェンス(40万円)がある(金属造りのへい:耐用年数10年)。

(4)相続開始後(少なくとも2023.3月までに)、賃借人のご要望により、
水溜まり対策として、土地を平らにして、ローラーで踏み固めた上で砂利を敷いた。
当該費用11万円については、賃借人と折半し、
5.5万円をAが負担し、費用の立替を行った賃借人から領収書を受け取っている。

(5)上記駐車場は、そのフェンスと共に賃借人に
R6.5に譲渡している(現状有姿のまま譲渡した)。

(6)Aは、賃借人より、相続開始直後位から、
土地を売却するなら、自身に売却して欲しいとの連絡を受けていた。

(7)賃借人は土地譲渡後に、当該駐車場に対してアスファルト舗装を行っている。

(8)被相続人が土地を取得したときの地目:畑

(9)被相続人が土地を取得した時(2010.5月)に
公共下水道負担金46,788円、水道メーター負担金(181,052円)も支出している。
但し、水道メーターは、譲渡時にはない
(譲渡時の売買契約書の特約条項にその旨記載されている)。

(10)譲渡時の売買契約書には、土地の代金しか記載されていない。

(11)譲渡費用は、土地の所有権移転登記費用、契約書印紙代、
地目変更登記費用、印鑑証明代金、契約時の交通費のみである。

(12)被相続人が取得したときの売買契約書には、
実測精算の条項(1㎡あたり81,883円で精算)があり、
売買契約時の面積は213.72㎡となっているが、
登記上は213㎡(譲渡時も同じ)となっている。
差額0.72㎡について精算した時の資料はない。
当該土地は仮換地であり、売買契約から約2年後に、
土地区画整理法による換地処分により、
登記面積が213㎡に変更されている。

【質  問】

上記前提において、
(1)当該フェンスは、非業務用資産を譲渡したものとして
取得費を計算してよいのでしょうか。

所令85①の対象となる減価償却資産は、
所法38②二「その資産が不動産所得…を生ずべき業務の用に供されていた期間以外の期間」となっており、
実質的に使用貸借である期間については、
「不動産所得を生ずべき業務の用に供されていた期間」には該当しないように思われます。

従って、当該フェンスの未償却残高は次の計算で良いでしょうか?
非業務用の耐用年数:10*1.5=15年(償却率0.06)
経過年数:H23.10~R6.5:12年7ヶ月∴13年
償却費{400,000-(400,000*0.1)}*旧定額法の償却率0.066×13年=308,880円
未償却残高:400,000-308,880=91,120円
相続開始日~遺産分割協議の間は、共有状態にありましたが、
最終的にAが単独で相続することになったため、
減価償却計算上、特にその点は考慮しなくても問題ないでしょうか?
(共有状態にあった期間は償却費を1/3にするなどの計算は行わなくても良いでしょうか?)

(2)(4)の水溜まり対策の費用については、修繕費ではなく、
①資本的支出(取得費)又は②譲渡費用として取り扱ってもよいでしょうか?
水溜まりが酷く、賃借人からのご提案で、上記前提(4)の工事を行うことになりました。
土地取得時の状況が分かりませんが、被相続人が取得したときの地目は
「畑」となっています。また、当該工事は賃借人からの要望であり、
A曰く、当該工事により、草抜きの回数も減っていることから、
土地の効用(利便性)を高めているように思えます。
そうすると、次の2通りの処理方法も考えられると思います。

① 資本的支出(改良費)として、
減価償却(構築物>舗装道路>石敷き:耐用年数10年*1.5=非業務用資産耐用円数15年)
を行った上、取得費に含める。

② 上記前提(6)、(7)及び賃借人からの提案で砂利敷きをおこなったことを勘案すると、
土地の上直接アスファルト舗装をするより、砂利を敷いた上で、アスファルト舗装した方が、
その強度は増すと考えられるため、当該支出は、譲渡資産の譲渡価額を増加させている。
従って、支出した5.5万円を譲渡費用として申告する。
修繕費(今回の譲渡所得の計算に影響させない)、①、②いずれの申告が妥当でしょうか。

(3)公共下水道負担金の処理について
① 売買契約書に記載はありませんが、上記負担金に係る権利についても
譲受人に移転していると思われるため、
水道施設利用権(耐用年数15年×1.5=非業務用資産耐用年数22年)として
減価償却を行い、土地と同様、長期分離課税(一般)として処理しても良いでしょうか?
措法31条では、長期分離課税の対象となる土地等、建物等には、
水道施設利用権は含まれていないように解釈できるため、
総合譲渡として処理しなければならないような気もしております。

② 仮に、総合譲渡として処理する場合、譲渡契約書に、土地の対価しか
記載されていなかったとしても、譲渡価額を取得費で按分して、
当該水道施設利用権の譲渡価額としても良いのでしょうか?
(その方が納税者にとっては有利となります)。
それとも、譲渡契約書に対価が記載されていない以上、0円とし、
当該水道施設利用権から生じた譲渡損失については、
なかったものとして取り扱うべきでしょうか?

③ ②で譲渡価額を按分する必要がある場合、譲渡費用も取得費に基づき
按分する必要がありますでしょうか?
私見ですが、前提の譲渡費用は、
土地の譲渡が原因で発生したと考えられるため、
按分までは必要ないような気がしております。

(4)譲渡時には設置されていなかった水道メーターの取得費について
取得時に水道メーターとして支払っていたとしても、
譲渡時に存在しないものについては、除却済みということで、
今回の土地譲渡の取得費に含めることはできないという認識で問題ないでしょうか。

(5)土地と共に譲渡したフェンスの処理について
フェンスは構築物であり、その譲渡所得は土地の譲渡と同様、
長期譲渡所得(分離)で内部通算が可能であるため、
あえて譲渡価額、譲渡費用の按分までしなくても問題ないでしょうか。

(6)相続登記費用の按分基準について
相続登記を行った年の固定資産税評価額で、
今回の土地譲渡分の費用を算出しても問題ないでしょうか?
他に合理的な按分基準があれば、ご教授お願いいたします。

(7)譲渡にあたって支払った司法書士報酬、測量士報酬の振込料について
少額ですが、こちらの費用も譲渡に直接要した費用として、
譲渡費用に含めても問題ないでしょうか。

(8)上記前提(12)についてですが、実測精算をしたという
資料は相続人Aの手許になく、売手への連絡もつきません。
差額が1㎡未満であれば、精算しないという暗黙の了解があったかもしれないため、
実測精算はしていないものとして、申告してもよいでしょうか?
以上について、先生のご見解をお聞かせください。


【参考条文・通達・URL等】

所令85(非事業用資産の減価の額の計算)
所法38②二(譲渡所得の基因となる資産の減価の額)
所基通38-9の2(非事業用資産の取得費の計算上控除する減価償却費相当額)
https://www.cs-acctg.com/column/kaikei_keiri/004934.html
所法38①(資産の取得費)
所基通37-10(資本的支出の例示)
所基通37-11(修繕費に含まれる費用)
「(5) 現に使用している土地の水はけを
良くするなどのために行う砂利、
砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は
砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額」
所基通38-10(土地についてした防壁、石垣積み等の費用)
令和6年版所得税基本通達逐条解説 524頁
「(3)また、土地について行われた防壁、石垣積み等であっても、
その規模、構造からみて、通常土地の改造又は改良のために
支出されたと認められないものについては、
その土地を利用するために設置される
構築物の取得費に算入することとした。」
所法33③(譲渡に要した費用)
所基通33-7(譲渡費用の範囲)
令和6年版所得税基本通達逐条解説 225頁
「譲渡価額を増加させるために支出した費用が
譲渡に要した費用に該当するとされているのは、
譲渡所得の課税が、資産の保有期間中に発生する
資産の値上がりによる価値の増加益に対するものであるとはいっても、
課税の対象となる所得は実現した所得であり、
抽象的に発生している値上がり益そのものではないことから、
その所得を実現するための譲渡行為により
多くの所得を得るためには、
譲渡者の努力とか手腕とかが必要であり、
より多くの所得を得るために寄与したと認められる費用は、
譲渡所得に対応するものと考えられるので、
その費用は、取得費とされるものを除き
譲渡に要した費用に含めることとしている。」
措法32条(長期譲渡所得の課税の特例)
所基通2-21(公共下水道施設の使用のための負担金) 



質問に対する回答部分を閲覧できるのは

税務相互相談会会員限定となっています。

※ご入会日以降に本会へ新規投稿された質問・回答が閲覧できます


税務相互相談会では、月に何度でも

プロフェッショナルに税務実務の質問・相談が可能です。


税務相互相談会にご入会の上

ぜひ、ご質問を投稿してみてください!