税務相互相談会の皆さん
下記について教えて下さい。
【税 目】
法人税(鎌塚祟文税理士)
【対象顧客】
法人
【前 提】
①A社は製造業
②メーカーであるB社からの要請で新商品を製造するための工場を100億円かけて建設する
③工場の土地と新しく建設する建物や設備の所有者はA社だが、その建設コストである100億円はB社に負担してもらう
④大前提として、その100億円の負担を初年度に一括収益計上とすることは資金繰りの関係上から避けたいと考えている
【質 問】
製品の品質とその安定供給を保証する責任をA社が負う「製品安定供給契約(期間10年)」のようなものを締結し、品質と安定供給の権利をB社が得るその権利金として100億円を受入れ、
1)その権利金には利息を付さない
2)その権利金はその「製品安定供給契約」の有効期間である10年で均等償却される
3)B社が「製品安定供給契約」を中途解除した場合は、権利金の返還請求権を放棄する
4)A社が「製品安定供給契約」を中途解除した場合は、B社に対して速やかに未償却分の権利金を返還する
という条項を付けた場合、
参考Q&Aにある建設協力金のように、その100億円は10年にわたって、返還を要しないこととなった償却額に相当する金額(1年で10億円)を各事業年度の益金の額に算入する対応で問題ないでしょうか?
【参考条文・通達・URL等】
参考>
《税務Q&A》
情報提供 TKC税務研究所
【件名】
賃貸借期間で償却する建設協力金の収益計上時期
【質問】
A社は、その所有する甲土地に賃貸用建物の建設を予定していたところ、折しも有料老人ホーム事業の新規開業を計画しているB社からの申し入れを受け、A社が甲土地に有料老人ホーム用建物(以下「乙建物」といいます。)を建設してB社に賃貸することになり、契約期間を20年とする賃貸借契約を結びました。
乙建物の建設に際して、A社はB社から、老人ホームの用に供するために必要な設計及び仕様の変更に伴う建設費の増加額として見込まれる6千万円を、建設協力金(以下「本件建設協力金」といいます。)として受領しましたが、乙建物に係る賃貸借契約書には、本件建設協力金に関して概ね次のことが約定されています。
(1)建設協力金には利息を付さない。
(2)建設協力金は賃貸借期間20年間(240か月)において均等に償却されるものとする。
(3)A社は、B社に対し負担する建設協力金の返還請求権を担保するため、乙建物に抵当権を設定する。
(4)B社が賃貸借契約期間中に契約を解除した場合は、建設協力金の返還請求権を放棄する。
(5)A社が賃貸借契約期間中に契約を解除した場合は、B社に対して速やかに未償却分の建設協力金を返還する。
そこで質問ですが、A社が受領した本件建設協力金については、税務上どのように取り扱うべきでしょうか。
また、併せてB社における処理についてもご教示ください。
【回答】
1 建設協力金とは、建物賃借人が建物賃貸人に対して差し入れる一時金をいい、例えば、新規事業を企画する事業者が、土地の所有者に対して、事業計画に必要な設計や仕様等を提示して、その事業計画にマッチする建物を建ててもらい、完成した建物を一括して借り上げるために、建物の建設資金の全部又は一部を土地所有者に交付する金員をいい、この建設協力金の交付を伴う賃貸借契約は、一般に「建設協力金方式」や「オーダーメイド賃貸借」とも呼ばれているようです。
建設協力金の性格は多種多様であり、大別すると、〔1〕契約期間やその他の一定期間において分割返済を要することとされ、貸付金の実質を有するもの及び〔2〕賃貸人の都合による契約解除の場合を除いて返還を要しないこととされ、契約期間に応じて均等償却されるものに分かれるものと認められます。
したがいまして、建設協力金の税務上の取扱いは、その建設協力金に係る契約内容に応じて異なることになり、上記〔1〕の貸付金の実質を有する建設協力金については、利息の有無による違いこそあれ、金銭消費貸借として取り扱われるため、元本の返済に関しては損益が生じませんが、上記〔2〕の建設協力金は、返還を要しない賃貸借保証金のように、順次返還を要しないこととなる金額の収益計上の時期・方法等が問題となります。
すなわち、資産の賃貸借契約等に基づいて保証金、敷金等として受け入れた金額(賃貸借の開始当初から返還が不要なものを除きます。)であっても、期間の経過その他当該賃貸借契約等の終了前における一定の事由の発生により返還しないこととなる部分の金額は、その返還しないこととなった日の属する事業年度の益金の額に算入することして取り扱われます(法基通2-1-41)。
2 お尋ねのケースにおいて、A社を賃貸人としB社を賃借人として有料老人ホームの用に供される乙建物の賃貸借契約において、B社からA社に差し入れられた本件建設協力金については、〔1〕賃貸借期間20年間において均等に償却されること、〔2〕B社が賃貸借契約期間中に契約を解除した場合は、建設協力金の返還請求権を放棄すること、そして、〔3〕A社が賃貸借契約期間中に契約を解除した場合は、未償却分の返還を要するものとされることが約定されているものと認められます。
そうすると、本件建設協力金は、返還を要する貸付金の性質を有するものではなく、賃貸借契約期間の経過に伴い、各事業年度における償却額に相当する金額の返還を要しないことが確定していく「預り金」的なものであり、上記1の〔2〕の類型に属する建設協力金と認められることから、保証金償却の取扱いと同様に、返還を要しないこととなった償却額に相当する金額を各事業年度の益金の額に算入するのが相当と考えられます。
その具体的な処理としては、本件建設協力金の各事業年度における償却額について、「建設協力金(預り金)××/建設協力金償却益××」等として、益金の額に算入する方法が考えられます。
また、賃借人B社が契約を中途で解除した場合には、その時点における未償却分の全額の返還不要が確定することから、その時点で一括益金算入すべきものと考えられます。
3 一方、B社における本件建設協力金は、賃貸借期間に応じて償却されるため、事実上は賃借料の前払の実質を有するものと認められることから、本件建設協力金の各事業年度における償却額を、「建設協力金償却損(賃借料)××/建設協力金(前払賃借料)××」等として、損金の額に算入する方法が考えられます。
また、B社が契約を中途で解除したことにより、建設協力金の返還請求権を放棄した場合には、その時点における未償却分の全額を、「建設協力金放棄損××/建設協力金(前払賃借料)××」等として一括損金算入すべきものと考えられます。
【関連情報】
《法令等》
法人税基本通達2-1-41
【収録日】
平成30年 8月28日