[soudan 08426] 損害賠償金の益金算入時期について
2023年7月21日

税務相互相談会の皆さん

下記について教えて下さい。


【税  目】


法人税(井上美樹税理士)


【対象顧客】


法人


【前  提】


A社はある事業を25年間継続してきた。地元密着で仕事をする一方でネットで集客をするという面がある事業である。

A社社長の真面目な経営方針により、地元での信頼を重ねており、一方でネット上の評価も高く新たな顧客の集客も順調であった。


この事業はある免許が必要で、一定期間ごとに更新手続きが必要である。

何度も更新してきており、手続き的には簡単なものである。

更新する上で、従事する社員名を明記する必要があり、その社員の要件としていくつかある中、過去3年間に起訴された事実がないこと、というものがある。



一方、A社の古参社員であるBが2年前に酔った上、通行人とトラブルとなり一時的に警察に拘束されるという事件があった。

その後、A社社長がBに対して、示談や起訴等になったかどうか、という点を何度も尋ねていたが、Bからは「相手が何も言ってこない」という報告だった。

そういう状態が続き、Bから新たな報告もないまま、2年が経過した。


ところが、Bは事件後に起訴されており、社長からの叱責を恐れ報告せずうやむやにしていたことが発覚。

免許更新手続きの審査段階で審査機関から指摘され、発覚したものである。

時すでに遅し。免許更新が認められず、25年間行ってきた事業が停止という状況となった。


幸い、免許再取得が認められる方向で、停止期間は2か月ほどとなった。


ただ、その間に地元顧客の信頼が損なわれることとなり、また、ネット上でも免許停止処分に関する情報が表示され、A社の社会的な信用は著しく傷つけられた。

また、2カ月間はまったく業務が出来ない状態となり、本来であれば見込まれる売上が得られないこととなった。業務開始した後も、2カ月間の停止期間がなければ得られたであろう売上が得られない期間が少なくとも6か月ほど継続する見込みである。


①得られたであろう売上

②地元顧客からの信頼の毀損

③再審査による追加コスト


これらを構成要素として、A社はBに対して損害賠償金として3千万を請求し、Bはこれを認め、覚書を交わして今後200カ月かけて毎月15万円ずつ支払う旨の約束をした。


【質  問】


<質問>

以下のような<考察>を経て

入金額のみを益金算入するものとする と考えますがいかがでしょうか。



<考察>

①通達

法人税基本通達2-1-43 では、相手が「他の者」の場合、入金ベースで益金算入とされている

逐条解説では、「他の者」に役員・従業員は含めず、場合発生した時点で全額益金計上とされている。


これは、「収入の圧縮(横領」や「経費の過大計上(個人経費への支出)」等、相手が役員・従業員であれば、その被害額も算定しやすいということを考慮してのことと思われます。


経理処理としても


未収入金/売上(経費)


として、債権の認識も容易だと考えます。


②損害額の確定が難しい

通達では、「他の者」の場合は損害額の確定が難しく、役員・従業員の場合は算定が可能という前提があるように思います。

今回の場合、従業員が賠償請求の相手であっても損害額の算定は難しいです。

翌期以降も損害(顧客に対する信頼の毀損による売上の減)は続く見込みであり、それを見越した上で損害請求しています。



③見積損失額の引当計上

債権が確定という事実が優先され、全額を益金算入する必要があるのなら、算定が困難ではあるものの見積損失額を引当計上し、損金算入することも考えてみました。ただ、かなり無理があるなと考えています。


実際の損失額は請求した3000万より多くなると想定しており、仮に5000万と想定される場合、以下のような処理と考えています。

想定損失額  5,000万

今期売上減  3,000万(営業停止期間売上2,000万+再開後前年比減1,000万)

来期以降見込 2,000万


(今期)

損失 2,000万 /引当 2,000万

未収 3,000万 /収益 3,000万


(回収時)

預金 30 / 未収  30

引当 20 / 引当戻 20



④金額確定部分

今回のケースで、再審査のための追加コストがあります。

業界団体への入会金で、今回改めて300万の支払が必要となりました。


この300万部分については、金額が確定しており、これも含めたところで損害賠償請求をしていますので、この部分については

未収 300万/ 収益 300万 と処理


ただ、この場合においても、入会金ですので損金算入は5年間でしていくことになります。

ですので、収益計上が先行する形となってしまいます。


支払額そのものを、Bに対する債権として認識することも検討しましたが、

この入会金等はあくまでもA社としての支出ですので、適当ではないように考えています。


【参考条文・通達・URL等】


法人税基本通達2-1-43




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