[inspire 00235] 従業員の死亡後に発覚した横領事件について
2022年1月13日

久保様

いつもお世話になっております。

昨年12月から受けている税務調査の対応について
ご相談があります。

調査対象期間H31.1月期、R2.1月期、R3.1月期の3期

実は前回にもご相談していた従業員の横領事件の案件です。

H30年10月に当該法人の経理担当者が急死し、急遽別の経理担当者を
準備し、会計処理を引き継ごうとしたところ、振替伝票しか資料がなく
会計データ等がない状態であることが判明しました。
その後、H30年12月に死亡した経理担当者の交際相手の弁護士から
死亡者の部屋に大量の経理資料・伝票類があるから引き取って欲しいという
連絡があり、引取に行った結果、H30.1月期までの会計データはあったものの
進行年度の会計データはなく、イチからの入力・処理となりました
ところが、預金残高は合っているものの、売掛金・受取手形・支払手形残高に
多額の違算があることがわかり、合計で5億円以上の誤差があることが判明しました。
また調査の段階で、H29.1月期とH30.1月期に支払手形を使った横領処理が
約7000万円判明しておりますが、売掛金・受取手形勘定については
横領を立証できるような処理は見つかりませんでした。
そもそも会計処理と照合する資料が残っていないという事情もあります。

法人側では経理担当者が横領していたのではと考え、残高違算額の全額について
不当利得による損害賠償請求をR1年に交際相手及び相続人に対して行ったものの
相続人は全員がすでに相続放棄をしており、また交際相手側は不当利得の立証責任が
法人側にあるとして訴えの取り下げ請求をしてきました。

結果、横領及び不当利得の立証が難しいことや、交際相手がその横領金を取得していたことまで
立証することは非常に困難なことでもあり、H3年2月に取り下げることになりました。

税務調査では、請求を取り下げたH3年2月で損害賠償請求権がなくなったとしてH4年1月期にて
違算額すべての損失計上を認めることで交渉をし、当初は認めるスタンスであったのですが、
年明けに突然、以下の税務大学校の研究論文を引用して

不法行為に係る損害賠償金等の帰属の時期-法人の役員等による横領等を中心に-
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/62/02/hajimeni.htm

「その損害が法人の使用人による横領による損失である場合は、通常、損害賠償請求権は
その時において権利が「確定」したものであるから、被害発生事業年度において、
当該損失の額を損金の額に参入するとともに、損害賠償請求権を益金の額に算入する」
ということから、被害発生事業年度がH28.1月期以前であると類推されることから
H29.1月期以降で横領されたと証明できる金額以外については、時効によって
損金算入は認められないとする見解を示してきました。

この結果、R4年1月期に当初5億円以上の損失計上する予定が、
横領をされたと証明できる金額約7000万円しか損金が認められないことになり、
4億円以上がまさに泣き寝入りになってしまう事態となってしまいます。

税務大学校の研究論文がそもそも税務署の指摘根拠になり得るのでしょうか?
また、横領が発覚(判明)したのが、不正経理をした担当者が死亡した後であって、
損害賠償請求権の相手方が横領者の相続人や交際相手であっても、
この研究論文による「不法行為の相手方が「他の者」に該当するのでは?」とも
思えます。

経理不正(横領)が発覚したのが、担当者の死亡後のH30年10月以降であり、
賠償請求の相手方が相続放棄等でいなくなったH3年2月に損失額が確定したとは
考えられないでしょうか?
いつ横領されたかわからない中で5年以上昔のものについては時効によって
損金を認めないというのは納得がいかないのですが、いかがでしょうか?

不正が発覚した際には、不正を行った者がすでに死亡し
また、残高違算(経理処理のミス)と横領とが混在しており、
横領の発生時期と違算の根拠が示せない中での交渉の状態です。

何かいい考えがないかお尋ねしたい次第です。

よろしくお願いします。



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